たどり着いた答えは「ごみ箱がライバル」!? 政府も動かしたデンマーク発のフードシェアリング企業が提案する「見て、かいで、味わって」
「Too Good To Go(トゥー・グッド・トゥ・ゴー)」は、食費をできるだけ安くおさえたい消費者と、食品ロスを削減したいベーカリーやカフェ、レストランなどの小売り業者や飲食店をつないでフードシェアリング・サービスをおこなうスタートアップ企業である。 【写真】地元政府を動かして実現した牛乳のラベル 社名の「Too Good To Go(TGTG)」は日本語で「捨てるにはもったいない」という意味。TGTGのアプリを使うことで、消費者は定価の半額以下で食品を入手でき、店側は新規顧客の獲得と食品ロスを減らしながら経費の回収ができる。そのうえ地球環境のためになるという「三方よし」の仕組みだ。 TGTGは、2024年12月現在、欧米18カ国とオーストラリアでビジネスを展開し、1億人の登録ユーザーと17万社のパートナー企業を抱えるグローバル企業となっている。環境や社会に配慮した企業だけに与えられる「Bコープ認証」を取得している。(食品ロス問題ジャーナリスト/井出留美)
「見て、かいで、味わって」食品ロスを減らそう
筆者は、2019年に同社創業の地デンマークのコペンハーゲンで、はじまったばかりの「見て、かいで、味わって」キャンペーンを取材している。 賞味期限の切れた食品はもう食べられないと捨ててしまう消費者が多い現実に一石を投じるため、TGTGは「見て、かいで、味わって」ラベルをつくった。 賞味期限の過ぎた食品を捨てる前に、自分の五感を信じて「目で見て、においをかいで、味を確かめてみて、食べても大丈夫かどうかを自分で判断しましょう」と消費者に呼びかけることにしたのだと、同社マーケティング責任者(当時)ニコライン・コッホ・ラスムセンさんが教えてくれた。 取材から5年たったいま、キャンペーンに賛同した15カ国の500以上のブランドが自社製品のパッケージにTGTG特製の「見て、かいで、味わって」ラベルを採用している。 ニコラインさんによると、TGTGはほかにも、デンマークの行政機関に表現についてお墨付きをもらってから、食品企業に対して食品包装に「多くの場合、その後もおいしく食べられます」「賞味期限が切れてもすぐに悪くなるわけではない」というような記述を入れるように働きかけ、実現させている。 まだまだ誤解されていることが多いが、賞味期限は「おいしさのめやす」である。たいていの食品は、実際に食べても問題ないとされている期間より短めに賞味期限が設定されているので、期限が過ぎたからといってすぐに食べられなくなるわけではないのだ。 同社ではワーヘニンゲン大学に協力してもらい、「見て、かいで、味わって」ラベルが消費者の行動にどのような影響をもたらすかを確認するための実証実験をおこなう計画だ。