たどり着いた答えは「ごみ箱がライバル」!? 政府も動かしたデンマーク発のフードシェアリング企業が提案する「見て、かいで、味わって」
食品ロスのない星を夢見て
フードシェアリング・サービスを提供する企業はたくさんあるが、食品ロス削減のための消費者啓発活動や政府機関への提言まで、さらっとやってのけるような企業はそうはない。 そんな企業だから、一見大げさな「食品ロスのない星」という同社の目指す未来像も、すなおにカッコよく思える。 それは多くの食品企業が、より早く、より低コストで生産して利益を上げることを最優先にし、経済的な合理性が高ければ食品ロスを出すことも「よし」とする風潮への異議申し立てでもあるのだろう。 なにせ「ごみ箱が最大のライバル」と公言し、「一人がごみの量をゼロにしようとするより、多くの人がごみを少しずつ減らしたほうが大きなインパクトを生む」が持論の女性が最高経営責任者をしている企業なのだ。
小売り・製造・卸売業者とも提携しビジネスを拡大
筆者の取材に、TGTGの新しい取り組みとしてニコラインさんとターニャさんが紹介してくれたのは、スーパーやコンビニなど小売りとの提携だった。同社ではそれまでレストランやカフェなどの飲食店と消費者をつないできたが、2019年からは小売りと消費者のフードシェアリングを扱うようになっていた。 消費者がアプリを使い、モリソンズ、スパー、カルフール、ホールフーズなどの小売り業者が店頭で販売している生鮮食品や加工食品を割引価格で買えるようにしたのだ。 TGTGのフードシェアリングでは、店側は食品の詰め合わせを提供するようになっているため、消費者は何が入っていのるか開けてみるまでわからない。店側は店頭で割引販売をすることもできるが、その場合、どうしても手に取ってもらえずに売れ残る食品が出る。 TGTGのサービスなら、店側は食品ロスが出ないようにバランスよく詰め合わせることができるというメリットがある。ただしその場合、消費者側で食品ロスになる可能性もあるわけで、食品ロスを転嫁しただけと批判する向きもあるかもしれない。消費者にゆだねることにはなるが、それでも「食品ロスのない星」を考えると一歩前進といえるだろう。 同社はその後2023年に、フランス、デンマーク、オランダ、ベルギー、イタリアの5カ国を手はじめに「TGTGパーセルズ(小包)」というサービスをはじめている。これは食品製造業者・卸売業者と消費者をつなぐサービスである。 パッケージの変更、売れ残った季節商品、外箱に傷があるなど、さまざまな理由から製造業者や卸売業者の手元には、小売り業者には納品できないがまだ十分に食べられる余剰食品が残る。そうした訳あり商品を割引価格で消費者に販売する(仲買業者への転売はしない)というコンセプトだ。 提携している製造業者には、ユニリーバ、ダノン、コカ・コーラ、トニーズ・チョコロンリーなどがある。 「TGTGパーセルズ」の利点は、大きく分けて2つある。1つめは製造業者や卸売業者に対して、通常なら廃棄かフードバンクに寄付するしかない余剰食品を割引販売して利益を得るという「もうひとつの選択肢」を与えたこと。2つめは、ロシアのウクライナ侵攻以降つづく物価高に苦しむ消費者に、お得な価格で食品を調達できることだ。