「インフルエンサーマーケティング だけで長くは愛されない」と気づきはじめたブランドたち
洗練されたコンテンツよりも「リアル」を好む視聴者
ウェルネスブランドのアポセカリー(Apothekary)でブランドマーケティング責任者を務めるテレサ・ビショフ氏は、自身の経験から、同ブランドではマイクロやマクロインフルエンサーとのパートナーシップが成功していることがわかったと話す。アポセカリーは昨年、600人を超えるインフルエンサーとのネットワークを構築した。アポセカリーは2020年に設立されたが、昨年リブランディングしている。結果、自社商品がどのように役立つかをよりわかりやすく消費者に伝えるために、同ブランドはインフルエンサーマーケティングへのさらなる投資を計画した。 「本物であることは美しさに勝ると学んだ」とビショフ氏は言う。たとえば、当初はワインの代替品を使ったおしゃれなモクテルレシピ動画を制作していたが、すぐに視聴者はチンキという液状製剤を使ったリアルな日常コンテンツを好むことがわかった。荒削りで飾らない動画にしてみると、コンバージョンが高まることが判明した。この数カ月間で同社は、さまざまな素材を使って新しいカクテルを作るミクソロジストのインフルエンサーに、アポセカリーのチンキを使った独自のモクテル作りを自由にさせている。以前はクリエイターと協力して、プロの撮影による洗練された動画を制作していた。 今では「細部にこだわるのではなく、彼らのクリエイティブに自由を与えている」とビショフ氏は語った。また、もうひとつアポセカリーのROIを向上させたのは特別オファーの推進だ。「一般的な『下のリンクをクリックしてください』という行動喚起は効果がなかった」という。しかしインフルエンサーに、たとえば「今日限り、最低購入金額なし」のような期間限定オファーを提供することは、彼らのフォロワーにとってはるかに魅力的になる。
結果が見えにくいインフルエンサーマーケティング
それでも、インフルエンサーマーケティングには現在進行中の課題があるとビショフ氏は言う。具体的には「インフルエンサーマーケティングはKPI(重要業績評価指標)が曖昧であるため、効果の測定が難しい」という点だ。 そのためアポセカリーなどのブランドでは、デジタル広告と同じ方法でインフルエンサーマーケティングのパフォーマンス結果を測定しようとする動きが広がっている。さまざまな戦術をテストすることは現在、協力相手となる本物の声を探し出すことと同じくらい重要になっている。 エージェンシーもまた、ブランドにはより適切な測定方法が必要で、インフルエンサーマーケティングのすべての部分が同じ最終目標に向かっていることを確認する必要があると認識している。 食品飲料会社のネスレ(Nestle)や玩具メーカーのハスブロ(Hasbro)などをクライアントに持つ、ブランディングおよびデザイン会社のスクエアルートクリエイティブ(Square Root Creative、以下スクエアルート)創業者であるアリーシャ・バーチ氏によると、最近のインフルエンサーには「真のエンゲージメントをまったく考慮せず、総フォロワー数に基づいた吸収率を求めている」仲介者、エージェント、タレントマネジメントがついているという。ただし問題は、そのインフルエンサーのビュー数やメンション数が必ずしも売上や収益に結びつくとは限らないということだ。 過去にスクエアルートはその業界専門のインフルエンサーをクライアントのマーケティングキャンペーンに起用してみたが、「売上やウェブトラフィックの形でブランドに還元されるROIはほとんど、あるいはまったく見られなかった」とバーチ氏は語った。 バーチ氏によると同社は、プロのインフルエンサーよりも、総フォロワー数が少ないローカルな「ブランド支持者」を起用して成功を収めたという。「このタイプの人物とのコミュニケーションははるかに良好なものになるという実績があるし、価格をつり上げるようなブローカーもいない」。