マイク・タイソンvsジェイク・ポールは『台本』通り? 殿堂入り世界王者が行動規制条項の存在を主張
日本時間11月16日(日)昼に米テキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで開催される「ジェイク・ポールvsマイク・タイソン」が決着すれば、両者は完全に公認されたスポーツイベントに出場したという記録を残し、およそ8000万ドル(1ドル155.86円レートで約124億6960万円)を分け合うことになる。しかし、このヘビー級異色対決は「プロボクシングの公式戦」とされているが、誰もがその正当性を信じているわけではない。 【ライブ速報】「マイク・タイソンvsジェイク・ポール」プロボクシング公式8回戦をリアルタイムで速報します 間近に迫るマイク・タイソンとジェイク・ポール(いずれも米国)の公式戦について吹き荒れる『疑問』について、名門誌『The Ring』(リングマガジン)元編集人で本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイが解説する。
殿堂入り元統一王者が主張する『台本』と行動規制条項
『コブラ』の異名で名を馳せた元スーパーミドル級3団体世界王者のカール・フローチ(英国)は、タイソンvsジェイク・ポールについてある疑義を唱えている。昨年、国際ボクシング殿堂入りを果たしたフローチは、ジェイク・ポールの最大の『アンチ』のひとりであり、タイソンとの対戦を公然と非難し、58歳になった元アンディスピューテッド王者を心配する声を上げている。 フローチは、この試合には契約条項が付随している可能性があり、試合結果が「スポーツにおける偶発的事象」以外の何かによって決定される可能性があることを示唆したのだ。まずここで明確にしておくと、そう疑問を呈しているのはフローチだけではない。この対決を疑問視する多くの識者やファンのひとりに過ぎず、当初予定されていた7月の時点からこの疑惑が囁かれていた。 タイソンvsジェイク・ポールは、テキサス州免許規制局(TDLR)がエキシビションではなく、確かにプロボクシングの公式戦として公認している。TDLRはテキサス州内で行われるすべての格闘技の監督官庁であり、この試合に必要な権威はそれだけだ。 しかし、それでも一部の識者やファンからは、この試合の展開が、少なくとも部分的には事前に決定されているのではないか、という疑問の声が上がっている(編注:つまり「台本/脚本」=「八百長」を疑う声が上がっている)。それを裏付けるようにフローチは、タイソンとジェイクの間で結ばれた契約に「できることとできないこと」を制限する条項がある可能性さえ示唆している。 「マイク・タイソンが大けがを負い、何か問題が起きるかもしれないが、それを抜きにしても30歳も歳下のジェイク・ポールのほうが有利だ。結局は『老人と若者の対戦』であり、こんなのはフェアではない」とフローチは断じる。 「この試合はとにかく金になるから行われるのであって、その観点からは称賛に値する。ジェイク・ポールは(金を稼ぎ続ける)『マネーマシン』だ。彼はティーンエイジャーをターゲットにして、大金を生み出しているからね」 さらにフローチは踏み込み、試合展開に関しての具体的な条項があることを示唆した。 「タイソンは彼(ジェイク)を傷つけようとしても、それができない契約になっていると聞いているし、(それが事実であると)そう信じている」 フローチはこれらの『八百長』条項についての情報源を明かさなかったが、繰り返すように、この試合の正当性に疑問を投げかけているのは彼だけではない。 「台本通りだと思う」と、英国のトレーナー兼マネジャー、ツンデ・アジャエ(ライトヘビー級トップランカー、アンソニー・ヤードらを育成)は、英専門誌『Talksports Boxing』のインタビューで語っている。 さらに、元WBC世界ヘビー級王者のバーメイン・スタイバーン(ハイチ/カナダ)は台本存在説を下敷きに、タイソンが「台本を無視する」という憶測を披露している。 「台本の存在なんて忘れたほうが良い。マイク・タイソンは台本に従わず、ノックアウトを追い求め、その中で相手をぶちのめしたいだけさ」 もっとも、このような憶測や意見を超えて、どちらの意見が正しいかを示す実際の証拠はない。 ジェイク・ポールとタイソンは以前、この試合が台本によるものであることを強く否定しており、ジェイクはタイソンが体調を崩したために延期された当初の試合の会見でこう語っていた。英『Miror』紙から引用する。 「多くの人がオレを疑っている。ジェイク・ポールが(試合に)勝つと『この試合は八百長だ』『偽物だ』と言っている。だが、彼(タイソン)はキラーであり、戦士だ。そしてこのジェイク・ポールもキラーであり、戦士だ。マイク・タイソンを上回るボクシングができることを証明するつもりだ。『殺る(ヤル)』のはオレだ」 ジェイクが『偽物ファイター』という蔑称に憤り、自分が本物だと証明したがっていたとしても、恐らく否定できない要素がある。このヘビー級マッチが通常の公式戦にはない『エキシビションバウトの性質』を持っているということだ。