6階級制覇も睨む26歳が見据えるは“モンスター”の背中――特筆すべき中谷潤人の進化と近未来【現地発】
井上への野心があるからこそ重要になるのは――
中谷に関してもう1つの注目ストーリーは、“モンスター”井上との「日本人スーパーファイト」が実現するかどうか。中谷がPFPランキング入りを果たし、さらに2人の活動階級が近づいている現況から、ここにきて対戦がファンとメディアの間でも話題になる機会も増えてきた。 比較的、控えめなコメントが多く謙虚な中谷だが、井上との対決にはかなり以前から希望を公言してきた。対する井上も全米記者協会の年間表彰式で渡米した6月上旬に、米スポーツ専門局『ESPN』の試合中継でインタビューを受け、こう述べている。 「(中谷は)今の時点ですごく良い選手ですし、非常にこの先、対戦相手の候補の1人としてすごく楽しみな選手ではありますね」 すでに欧米でもこのマッチメイクを“いつか見たい”というリストに組み入れるコアなボクシング・ファンが増えている。近い将来、『ジャパニーズ・ドリームマッチ』が挙行されるかどうかは世界的な興味を呼びそうな予感がある。 ただ、少なくとも向こう1年以内といったスパンで実現するカードではないだけに、先走り過ぎるべきではない。このレベルのビッグマッチは当人たちの意図だけで決まるものでもない。何より中谷自身には、まだ井上と比べて自分のステイタスが足りないという思いがあるようだ。 「もっと評価を上げないといけません。周囲の人が最も期待してくれる状態でやれればと思うので、そのためにはバンタム級の統一だったり、複数階級制覇だったりというのが必要ですよね。もう少し時間がいるなとは思いますけど、なるべく早くできるようにいい試合をしていきたいです」 そんな野心があるからこそ、ここからの毎試合が余計に重要になってくる。目前に迫ったアストロラビオ戦でも内容が問われてくるのはすでに述べた通りだ。統一戦や複数階級戦をこなし、そこでも1戦ごとに支配的な強さを誇示していった時、ついにモンスターの背中が見えてくる。 それらは簡単なことではない。だが、井上以外にもこんな壮大な期待が抱けるボクサーが日本から出てきた事実を私たちは喜ぶべきだ。“ネクスト・モンスター”が新たなステージに足を踏み出したことで、「日本ボクシングの黄金時代」はもうしばらく続きそうな雰囲気が濃厚に漂ってきている。 [取材・文:杉浦大介]