アマチュアコーチがホークスのキャンプに招聘…プロ未経験者がプロのコーチと審判へ講義する事態に!?
「その後、髙谷コーチと食事する機会も作ってもらって、その席で『昨日の説明と今日の実技を見て、自分たちが現役のときと共通する部分もあったし、新しい視点を持つこともでき、フレーミングはやるべき技術だと思いました』と言っていただいて。その日の夜は眠れませんでした」 コーチ陣の懐の深さを実感したが、その一方で元プロ野球選手の実力も間近で見ることになる。フレーミングの説明と実技が終わった後の夜、室内練習場で清水コーチが一人、黙々とマシンの球を受けている場面に遭遇した。 「僕がキャッチャー陣に指導した内容をご自分でもやってみたようでしたが、首を傾げてしっくりきていないようでした。 そこで気づいたことを『ここをこうしてみてください』とアドバイスしたところ、次のボールからバシーン! と決まって、清水コーチも『おお、これか』って。ちょっとした一言を理解して、一発でモノにできるなんて、プロ野球選手はさすがだなと思いました。 その後、何球か捕った後に二人でボールを片づけているとき、『僕も技術を学んで選手に教えていきたい。ミットって止めるんじゃなくて、止まるんだなって。ボールの軌道にミットを入れていけば、止めるんじゃなくて、いいところで止まる。今、現役に戻ってこの状態でプレーしてみたい。あと3年は続けられた』と言ってもらえたのは嬉しかったです」 ◆子供のように楽しく練習するプロ選手を目の当たりにして コーチ陣からの信頼を得て、指導もスムーズに行えるようになった。プロ野球選手に対して、自分が培った技術や理論を伝える中で、現役選手の思いもよらない姿を見ることができたのも嬉しい収穫だったという。 「選手を指導して嬉しかったのは、周りから『こんな楽しそうなキャッチャーみたことない』と言われるほど、選手たちが楽しそうに練習に取り組んでくれたことです。 選手たちもすごく研究するようになりましたし、今まで見たことない視点でキャッチャーのことを考えたり、自分の映像をすごく見るようにもなってくれました。 ウキウキしながら練習してくれて、子供のころってなにか新しいことに触れたとき、夢中になって没頭するじゃないですか。プロの選手にもその感覚があったんだなって。 基本、キャッチャーの練習ってつまらないのがお決まりなんですけど、すごく楽しくやってくれて『初めてやった』『初めてできた』という言葉もたくさん聞けました」 こうして、プロ野球チームのキャンプに参加し、指導面で大いなる手応えをつかむと、自分の中にも予期せぬ心境の変化が訪れた。 「僕はこれまで、一般的に見るとネット界の人間という風に見られて、映像で出るような上辺のところで勘違いされることも多かったんです。 それでも、自分がやってきていることは間違いじゃないという自負がありまたが、一方で実際のプロ選手やコーチを相手にしたときにどこまでできるか不安もありました。 今回、こうして実際に会って、話をすることの大切さを実感しましたし、自分の中での自信が、山をひとつ越えて、もっと強い自信になりました。それに、小久保裕紀監督や王貞治会長に挨拶することもでき、自分でも『すごいところにいるんだな』って(笑)」 プロ選手への指導だけでなく、プロコーチへの講義、プレゼンをこなすという異例の経験をしたアマチュアコーチは、秋季キャンプの実績も認められ、春季キャンプへも招聘されることになった。 しかし、この春季キャンプでは、さらなる大きな壁を経験することになる。それは「NPB審判へフレーミングへの取り組みを説明する」ことだった。ともすれば、フレーミングを駆使してストライクを稼ぐキャッチャー対見逃さない審判という対立構造として見られることもある中で、緑川さんは一体どうなってしまったのか……。 ■後編では、春季キャンプの中から、思わぬ結果となった緑川さんとNPB審判とのやり取りについてをピックアップ。巷を騒がせる「フレーミング論争」に決着? 取材・文:高橋ダイスケ
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