「洞窟」と呼ばれる世界初の「核のごみ」最終処分場、建設現場を記者が歩いた フィンランド、地下深く放射線の影響がなくなるまで「10万年」眠らせる
トンネルの床面には8メートルほどの間隔で深さ8メートルの縦穴が掘られている。そこにキャニスターを入れ、さらに浸水を防ぐためにベントナイトという粘土鉱物で周囲を覆う。最後はトンネル自体もベントナイトなどで埋める。全てのトンネルが埋まった後は地下道も閉鎖する。処分場に人が立ち入れないようにし、10万年の時がたつのを待つことになる。 恐ろしく長い時間をかけた処分計画だ。地震の恐れはないのか気がかりになっていると、ポシバ社のパシ・トゥオヒマー広報部長は「岩盤は20億年前にできたもので、現在も原状をとどめている。とても安全だ」と強調した。 放射性物質が漏れ出すことはないのか。ピルティッサロ氏は「漏れることがあるとすれば水分に混ざって地上に運ばれることが考えられる。だが核燃料を収容するキャニスターは腐食しにくいし、ベントナイトも水を通しにくい。オンカロ一帯の岩盤は水がほとんどしみ出ないので、問題ない」と語った。
▽決め手は「地元の理解」 使用済み核燃料の最終処分場建設は世界各国が手探り状態だ。フィンランドに次いで事業が進むのが隣国スウェーデン。2022年、スウェーデン政府は南部エストハンマルのフォルスマルクに建設する計画を承認し、世界で2例目となった。処分方法はフィンランドと同様、銅製キャニスターに核燃料を入れ、地下約500メートルに埋める計画。稼働は2030年以降の見通しだ。 米国は法律で西部ネバダ州ユッカマウンテンを最終処分場建設地と定めたが、政府は手続きを中断。フランスは2023年に事業者が政府に設置許可を申請した。 日本は、最終処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)が今年2月、全国初の文献調査を行った北海道の寿都町と神恵内村について次の段階に進めると判断した。だが、鈴木直道知事が反対の意向で調査は実現が見通せず、建設地選定が難航している。 トゥオヒマー氏は、オンカロとオルキルオト原発がある人口9200人超の自治体エウラヨキでは「原発での勤務経験のある親戚や友人のいる住民が多く、原発に理解がある。大きな反対運動はなかった」と解説し、「中間貯蔵施設から近く、地元の理解もあることが決め手となった」と振り返った。
ただ原発から12キロ離れた町ラウマの博物館職員の女性(49)は「気候変動など将来何が起こるか分からない中で、完全には賛成できない」。町の別の女性(42)も「放射線漏れのリスクは残る。(オンカロは)ない方がいい」と打ち明けた。