「洞窟」と呼ばれる世界初の「核のごみ」最終処分場、建設現場を記者が歩いた フィンランド、地下深く放射線の影響がなくなるまで「10万年」眠らせる
むき出しとなったごつごつした黒っぽい岩盤を頭上の蛍光灯が照らし出す。地下約450メートルのトンネル。息苦しさはなく、気温11度で氷点下の地上よりいくぶん暖かく感じる。ここはフィンランド南西部、オルキルオト島にある世界で初めて建設が始まった原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分場、「オンカロ」(洞窟)だ。2月下旬、内部が報道陣に公開された。原子炉から取り出された使用済み核燃料は放射線の影響がなくなるまで10万年、ここに眠ることになる。早ければ年内に操業開始の可能性がある。(共同通信ロンドン支局 伊東星華) 【写真】福島第1原発の処理水を使って飼育されているヒラメ トリチウム濃縮されず
▽総延長50キロの巨大地下空間 オルキルオト島はバルト海に面する。自然が豊かでトナカイなど野生動物も出没し、夏季は狩猟目的の客も訪れる。フィンランド国内で稼働する原子炉5基はオルキルオトと南部ロビーサの2カ所に分かれる。このうち、オルキルオトには欧州最大級の3号機を含め、3基が集中し「原発の島」と化している。 蛍光色の安全ベストと緊急用酸素吸入器を身につけ、地上から数人乗りのエレベーターで約1分。あっという間にオンカロ内部に到着した。オンカロの地下坑道は、人の出入りや機械を運び込む曲がりくねった地下道と核燃料を保管するトンネルからなる。これまで掘削したトンネルは5本だが、操業開始後も掘り続けて最終的には100本以上になる予定だ。将来は総延長が約50キロの巨大な地下空間が誕生する。 オンカロの事業者ポシバ社が用意した乗用車で暗い地下道を数分走ると、トンネルにたどり着いた。足元は工事で使用した水などでぬれていた。「やがてはこの下に使用済み核燃料が埋められることになる」と、ポシバ社の地球物理学者トミー・ピルティッサロ氏は説明した。
フィンランドで初めて原発が稼働したのは1970年代後半、ロビーサ1号機だ。その後、1980年代初頭にかけてロビーサ2号機、オルキルオト1号機、オルキルオト2号機が相次ぎ稼働した。2011年に日本で起きた東京電力福島第1原発事故後も、フィンランドでは原発推進の方針を維持した。 政府は、2035年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指している。近年は風力やバイオマスによる発電にも力を入れているが、ロシアが2022年にウクライナに侵攻した影響により欧州でエネルギー危機が起きると、原発を支持する世論が高まった。 原発は、2023年はフィンランド国内電力需要の40%超を占め、最大の電力供給源となっている。オルポ首相は今年3月21日にブリュッセルで開かれた原子力エネルギーの首脳会合で「フィンランドは45年も原発を安全利用してきている。欧州最大級の原子炉によって安価な電力をより多く供給できるようになる」と技術を誇った。