「洞窟」と呼ばれる世界初の「核のごみ」最終処分場、建設現場を記者が歩いた フィンランド、地下深く放射線の影響がなくなるまで「10万年」眠らせる
▽「トイレなきマンション」に初のトイレ 国際原子力機関(IAEA)によると、世界で初めて原子力による発電が始まった1954年から2016年末までの間、地球上で生じた使用済み核燃料は39万トンに上る。環境保護団体グリーンピースの報告書は、世界で毎年約1万2千トンのペースで増えていると指摘する。これだけの核のごみが増えているにもかかわらず、最終的な処分に至った国はない。原発が「トイレなきマンション」とも言われるゆえんだ。 使用済み核燃料の処分方法として、他国への輸送や、再処理してウランやプルトニウムを取り出して再び燃料として利用する核燃料サイクル構想、再処理せずにそのまま廃棄する直接処分がある。 フィンランドの場合、旧ソ連から原子炉を導入したロビーサ原発では過去に使用済み核燃料をロシアに返還していた時代もあった。だが1994年に原子力法が改正されて使用済み核燃料の輸出入が禁止となり、再処理せずに高レベル放射性廃棄物として国内で処分することになった。現在はロビーサとオルキルオトそれぞれの原発に併設される中間貯蔵施設で使用済み核燃料が保管されている。
放射線レベルの高い使用済み核燃料は地下深くの安定した地層の中に埋設する処分方法「地層処分」が最も好ましいとされている。フィンランド政府は1983年、地層処分の方針を決定した。国内100以上の調査候補地を4カ所にしぼり、2001年に議会は原発が立地するオルキルオトを処分場建設地とすることを承認した。 フィンランド国内5基の原子炉から生じる使用済み核燃料は全て、オンカロで最終処分することになる。政府は最大6500トンの搬入を承認しており、満杯となるのは2120年代だという。 ▽20億年の岩盤内に10万年 核燃料の処分手順はこうだ。原子炉から取り出した燃料は高温のため中間貯蔵施設のプールで40年かけて冷やしながら放射線レベルが減衰するのを待つ。その後、オンカロの真上に立ち、地下につながる「カプセル化工場」と呼ばれる建物に運ぶ。核燃料はそこで筒状の鉄製鋳造物に入れられ、さらに腐食に強い銅製キャニスターに封入した上で、オンカロのトンネルに降ろされる。