霜被害リンゴ、ふるさと納税の寄付押し上げ 長野県飯綱町、前年度比ほぼ倍増の12億5000万円超
「助けてほしい」との訴え、広がった支援の輪
飯綱町への2023年度のふるさと納税寄付額が、前年度の2倍近い12億5362万円と過去最高に達した。返礼品の柱は町特産のリンゴ。昨年は霜の被害が大きく通常の出荷が難しくなった一方、被害に遭ったリンゴを返礼品に加えて「助けてほしい」と訴えると、支援の輪が広がって寄付額を押し上げた。 【グラフ】ふるさと納税、飯綱町への寄付額
標高500~900メートルの町内は冷涼で昼夜の寒暖差が大きく、リンゴの栽培に適した気候。硬さや甘み、酸味のバランスが取れた濃い赤色の果実が人気だ。町は、国産リンゴの100個に1個が町産だとPR。「日本一のりんごの町」を掲げている。
霜が開花期を直撃、果実変形や色むらが発生
だが昨年の春に霜の被害が発生。ながの農協いいづなフルーツセンター(飯綱町)によると、町内では昨年4月に3回も強い霜が降りて開花期を直撃した。このため果実が変形したり、色づきにむらが生じたりする被害が発生。ランクの落ちたリンゴは贈答用に比べて販売しづらく、安価となるため、農家への影響が強く懸念された。
「感謝りんご」と名付け
ただ味は変わらないため、町と同センターは連携し、被害に遭ったリンゴをふるさと納税の返礼品に設定。ランクが落ちると通常は1キロ100~250円で販売するが、返礼品として受け取る寄付額を最低1キロ300円に設定。支援への思いを込めて「感謝りんご」と名付けた。
ふるさと納税の仲介サイトに被害の実情と合わせて掲載すると注目を集め、「町を応援したい」と考えた人から寄付が続々と集まった。秋の収穫中に予定分が埋まる人気ぶりで、同センターで扱うリンゴの約半分の計586トンを感謝りんごとして出荷した。
8億6525万円の寄付集まる
感謝りんごへの寄付額は8億6525万円。町によると、23年度に仲介サイト「楽天ふるさと納税」でリンゴを返礼品とする寄付を最も集めた自治体になった。
農家の収入確保、「ありがたかった」
同センターの岡宮拓斗所長(35)によると、ランクの落ちたリンゴは通常、注文を取るのも大変。農家の収入を確保するための寄付額の設定を含めて「ありがたかった」とし、「町産リンゴのファンづくりにつながった」とみる。一方、「良いリンゴを生産し、消費者が買いたくなるのが理想」とし、今年も生産に力を入れていくとする。
町は、寄付金を子育て支援や産業振興など幅広い分野で活用する予定。ふるさと納税を通じて、地域と継続的に関わる「関係人口」の増加にもつなげたい―としている。