笑下村塾代表・たかまつなな―「笑える!」を入り口に主権者教育にまい進、「学校内民主主義」実現を目指す
若者にも社会を変える力がある
24年4月日本財団が行った6カ国(日・米・英・中・韓・インド)の「18歳の意識調査」では、「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」が45.8%、自国の将来が「良くなる」は15%で、それぞれ調査国中最下位だった。その他の問いでも自己肯定感の低さが浮き彫りになった。 たかまつさんの出張授業では、実際に10代が社会課題を解決した事例を紹介し、生徒に、今どんなことを変えたいと思っているか、変えるためにはどんな手段があるかを考えさせ、発表させる。 「校則を変えたい」「制服を変えたい」「自転車通学の道を広くしてほしい」「通学時間帯の電車の本数を増やしてほしい」。こうした要望の実現手段として、「署名を集める」「SNSに投稿する」「メディアに訴える」「行政や企業に陳情する」から「政治家になる」まで、さまざまな案が挙がる。 「若者の投票率を上げることは大事ですが、それだけを主権者教育の評価指標にしてほしくありません。本来の目的は、若者が自ら考え、行動を起こして社会参画できるように導くことです。自分も社会を変えられると自信を持ってほしい」
高校生が知事の「相談役」に
2023年、群馬県では、出張授業の成果に基づき「リバースメンター制度」を導入。一般的には部下が上司の相談役になる仕組みだが、笑下村塾が運営する制度では、メンターに選出された10人の高校生が知事の相談役になり、自由な発想で政策提言をする。メンターたちの提言を受け、県はさまざまな年代が交流するeスポーツ大会を開催、子宮頸がんワクチンの啓発動画制作やショッピングモールでのワクチン接種など、さまざまな取り組みを実現した。 群馬県にならい、福岡県古賀市も笑下村塾と連携し、高校生リバースメンター制度を取り入れた。全国に広げていきたいが、自治体によって、子どもの意見表明や主権者教育の取り組みに温度差がある。1歩1歩、着実に成果を積み上げていくしかないと、たかまつさんは考えている。 「少しずつではあるけれど、私たちの出張授業を受けた子どもたちが、実際に校則を変えようと声を上げた事例もあります。高校生にとって、自分の声が社会に届くという経験が何より大事。身近な問題意識から行動を起こしてほしい。小さな成功体験が自信につながり、その自信が社会を変える原動力になるはずです」 究極的には、学校内民主主義の制度化を訴えていきたいと語る。 「そのためには、まず教師が子どもたちを信頼すること。子どもたちは、自分たちの選んだ代表を信頼すること。民主主義は信頼がベースです。例えば、フランスでは生徒の代表が学校運営に参加する仕組みが法制化されています。浸透するまでには、30年かかったと聞きました。日本では50年かかるかも。それでも、子どもたちの声を聞く仕組みづくりが必要です」