福岡県大川市、「大川の駅」事業を白紙に戻した市長に推進派多数の議会が反発…対立先鋭化の恐れも
「家具のまち」で知られる福岡県大川市が揺れている。新たな産業・観光振興拠点「大川の駅(仮称)」事業の見直しを訴え、昨秋に初当選した市長が白紙に戻したのに対し、推進派が多数の議会は人事案を不同意とするなど反発。市長は今月から市政報告会で市民に理解を求めていく方針だが、予定地の新たな活用策は見通せず、市長と議会の対立が先鋭化する恐れも出てきた。(佐々木道哉) 【写真】当選証書を受け取る江藤氏
市を二分した市長選挙「亀裂の修復が課題」
「市長選では大川の駅を巡り、市が二分された。この亀裂をどう修復していくかが私に課せられた課題だ」。選挙後初の市議会となった昨年12月の定例会。現職を破った江藤義行市長(77)は所信表明でそう強調した。
大川の駅は、筑後川と支流に挟まれた中州の同市大野島に整備され、2028年3月の開業を予定していた。計画では道の駅と水辺に親しめる川の駅、木工業のPRを図る拠点施設などで構成し、敷地面積(民間企業誘致エリアを含む)は約9ヘクタール。総事業費(同)は約89億円を見込み、年100万人の来場を想定していた。
人口3万1000人の市で6500人分の反対署名
江藤氏は市内の家具商社の元会長。政治経験はないが、巨額な事業費、高潮や津波で浸水する恐れのある場所が予定地に選ばれたことに疑問を持ち、計画に反対する住民団体を結成。人口約3万1000人の同市で昨夏までに約6500人分の反対署名を集めた。
昨年9月の市長選では、大川の駅の是非を最大の争点に掲げ、「白紙に戻して見直す」と主張。一方、3期目を目指した倉重良一氏(47)は「にぎわいと稼ぐ力を生み出すための施設。今つくらなければ大川の未来はない」と訴えた。
大川市長を務めた自民党の鳩山二郎・衆院議員(福岡6区)や同党県議らの支援を受けた倉重氏が優勢とみられていたが、579票差で江藤氏が競り勝った。江藤氏を支援した市議は「署名活動で反対の声が盛り上がった勢いのまま選挙戦に入れたことが大きかった」と振り返る。
予定地は3月で整備ストップ、活用策は見通せず
市議13人のうち、9人は大川の駅の推進派で、市長選でも倉重氏を支援した。昨年12月の定例会では、前市長の退任に合わせて辞任した副市長と教育長の後任を選ぶ人事案が提案されたが、賛成少数で不同意に。地盤対策の工法を変更して契約額を減額する議案などの採決でも8人が退席した。