古墳王子の2024年歳末総決算!大ニュースの陰に隠れた考古学的新発見に刮目せよ
【1】国内初事例!上塩冶築山古墳出土の大刀が赤鞘だったと判明(島根県)
1887年(明治20年)に古墳の石室が発見されたと同時に、大量の副葬品が出てきた上塩冶築山古墳。もちろん現地はいつでも見学可能で、丸い墳丘や横穴式石室内のでっかい家形石棺に驚愕したり、出雲弥生の森博物館には煌びやかな副葬品たちが展示されている。 そんなおなじみの上塩冶築山古墳から出土していた金銀装捩環頭大刀が、なんと全国初の赤鞘であることが判明しました! ……え?それがどうしたって?まぁ普通はそういう反応でしょう。当然、縄文時代からずっと赤色の顔料は存在していて、土器や壁画、衣服や化粧にも使われていたであろうと考えると、刀の鞘にだって塗っていた可能性はある。 でも、今までそれを証明するに至っていなかったのが、ここにきて研究者の皆さんの熱意と科学の進歩により、国内初事例の発見となったのであります! もしかしたら各地の博物館の展示室や収蔵庫に眠っている考古遺物にも、思わぬ新事実が見つかるかもしれない。そんな新たな視点の大切さを実感したニュースでした。
【2】川の中にあったのは……なんと前方墳後円墳だった!(滋賀県)
5年前の2019年、滋賀県近江八幡市を流れる日野川でバードウォッチングを楽しんでいた人が、川の中の埴輪を見つけたのをきっかけに滋賀県が調査したところ、人工的に土を積み上げた跡や、一列に並んだ円筒形の埴輪が6本見つかり、古墳である疑いが浮上。 そしてさらに去年10月から今年2月にかけて、県文化財保護協会が同じ場所を調べると、新たに13本の円筒形の埴輪が一列に並んだ状態で発見され、埴輪の焼き方の特徴などから5世紀後半から6世紀前半頃に築造された前方後円墳である可能性が高いということがわかったのです。 これはぼくにとってかなりインパクトあるニュースで、例えば山の中とか森の奥とか建物の地下に実は……というケースはよくありますが、まさか川の中からとは!もう居ても立っても富雄丸山古墳から一気にワープで駆けつけましたよ。 まぁ当然といえば当然だけど、発掘調査を終えた古墳は川の中だから見えなかったよね……。せめて出土した円筒埴輪が見たくて、安土城考古博物館へお伺いしたところ、川の中で長い年月を過ごしていたからでしょうか、ずいぶんお肌の色素が白くなった朝顔形埴輪に会うことができました。 今回の川の中からの思わぬ発見から、全国にはまだまだ見つかっていない隠れた古墳が眠っているかもしれないと実感する出来事でしたね。