劣勢のイランに核武装の恐れ、「究極の抑止力」追求か
(ブルームバーグ): 数週間にわたるイスラエルの攻撃により、イランの代理勢力であるイスラム組織ハマスおよびレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが弱体化し、イランはこれまでになく劣勢に立たされている。イランが1日にイスラエルに対して発射したミサイル約200発の集中攻撃も「効果なし」と米国は判断した。
しかし、米国、イスラエル、アラブ諸国の現・元政府高官によると、こうした劣勢は意図しない危険な結果を招く恐れがあるという。追い詰められ、より脅威を感じているイランが核開発を加速させ、核兵器を追求するのではないかと懸念されている。
イラン国内の強硬派が、イラン政府に西側諸国との関係改善に注力するよう求める他の勢力と対立し、イランの最高指導者ハメネイ師に核兵器開発を命じるよう圧力をかけるかもしれない。イスラエル高官によると、ハメネイ師はどちらの道を選ぶべきかを検討している可能性があるという。
米中央情報局(CIA)の元職員で中東研究所(MEI)の研究員であるミック・マルロイ氏は「代理勢力がもはや自国の国家戦略に有効ではなく、通常戦力が全く及ばないと認識すれば、イランにとって唯一の選択肢は、核による報復のリスクを冒すことなく同国を攻撃することが非常に困難になるほどの核兵器の獲得を目指すことだろう」と述べた。
核兵器の獲得はイランにとって長期的なステップであり、中東での現在の紛争に直ちに影響を及ぼすものではない。核物質の開発はなお必要で、標的に到達可能な弾頭への搭載も求められる。装置の精巧さによっては数カ月を要する可能性がある。
しかし、イランが核開発に踏み切るとの見通しはイスラエルとの緊張が破壊的なまでにエスカレートするとの新たな懸念をあおっている。イスラエルは自国に相当数の核兵器を保有していると考えられているが、同国政府がそれを認めたことはない。
イランの次の行動は、イスラエルが1日のミサイル攻撃にどのように対応するかに左右される可能性がある。また、ミサイル攻撃が実際に大きな被害を与えることを意図したものだったのか、それとも単にメッセージを送るためのものだったのかの判断次第かもしれない。イランのミサイルの多くはイスラエルの防空システムを突破したが、被害はほとんど見られなかった。