劣勢のイランに核武装の恐れ、「究極の抑止力」追求か
イスラエルのネタニヤフ政権はイランへの報復を警告している。イスラエル国民や野党議員の間では強硬な対応を求める声が高まっている。ネタニヤフ首相の主なライバルの1人であるナフタリ・ベネット氏は「イランの核開発を破壊する」よう呼びかけた。
米国防総省の元高官で現在はワシントン研究所に所属するダナ・ストロール氏は、イランの「長期にわたる核開発プログラムへの投資が攻撃の対象になれば」、イランの指導者らが「核の敷居」を越える可能性があると警告する。バイデン米大統領はイランの核施設を標的とする動きを支持しないと明らかにしている。
米国家情報長官室(ODNI)が7月に公表した評価によると、イランはさらなる制裁、攻撃、非難に応じて一段の措置を講じ、「より高性能の遠心分離機の設置や濃縮ウランの備蓄増加、ウランの最大90%までの濃縮を検討する」可能性があるという。
これまでのところ、イランは核兵器開発の追求は検討していないと主張し続けており、米情報機関もイランが核兵器開発計画の再開を決断したわけではないとしているが、イランの現・元高官による最近の発言は同国が核に関する方針を見直す可能性を示唆している。
もしイランが原子爆弾の製造を決断すれば、中東地域で核軍拡競争に火がつく可能性がある。サウジアラビアの事実上の指導者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、イランが核兵器を製造するなら、サウジも同じことをせざるを得ないだろうと述べている。
米シンクタンク、民主主義防衛財団(FDD)の核不拡散・生物兵器対策プログラム副ディレクター、アンドレア・ストリッカー氏は、核兵器の開発は「(核戦争に)エスカレートすることへの恐怖をワシントンとエルサレムに抱かせる」ため、長期的には「究極の抑止力を提供する」ことになると指摘。「そうなれば、イランの代理勢力はそれほど対応されなくなり、イラン政権はさらなる侵略を追求できるようになる」と語った。