経済人が考える日本の課題 財界セミナーの議論【後編】
議論では国内でデータセンターや半導体工場の建設により、2033年度には最大電力需要が2023年に比べて537万kW増加する見通しも示されました。クルマの世界でも電動化、知能化が進むと、電力、とりわけエネルギーの問題に直面します。すべての問題はつながっていると痛感します。クエスチョンタイムで新浪代表幹事にこの点を質すと、エネルギー基本計画の話に及びました。 「電力は相当問題がある。いままであった第六次の電力の供給の仕組みそのものが、実現できないというのは明らか。第七次は現実的なものにしてもらいたい。電力に関してはとりわけ、不都合な真実を伝えなくてはいけない。そして国民のコンセンサスを早急に得て、手を打っていかなくてはいけない」 今年度中の策定に向けて、第七次エネルギー基本計画が議論されています。現在の第六次の計画はいわゆる「S+3E」、安全性を大前提に、安定供給、経済効率性、環境を重視して3年前の2021年10月に策定されました。2050年のカーボンニュートラル、2030年度の温室効果ガス46%削減に向けて電力供給の目標比率も定められました。再生可能エネルギー36~38%、原子力20~22%、天然ガス火力20%程度、石炭火力19%程度、石油火力などが必要最小限の2%程度、水素・アンモニアが1%程度というものです。つまり、火力発電はあわせて40%あまりの目標です。 しかし、現実には石炭や天然ガスなどの火力発電が2022年度の実績で70%を超えています。目標は野心的なものとはいえ、実態とのかい離をどうするのか、第七次計画の焦点となりそうです。 セミナーは2日間、経済人が日本の現状、課題をどう考えているのか、輪郭がはっきりしたという意味で意義のあるものでした。ただ、こうした議論を今後の政策提言にどう活かすか、経済同友会の腕の見せ所となります。 (了)