経済人が考える日本の課題 財界セミナーの議論【後編】
「報道部畑中デスクの独り言」(第378回) ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回も前回に続き、財界セミナーについて。
夏に入ると毎年恒例で開かれる経済界の夏季セミナーや政策懇談会、この中で小欄は経済同友会の夏季セミナーについてお伝えしています。後編は以下2つのテーマについての議論です。意外な視点からの意見も飛び出しました。 ■投資拡大、日本が本当に目を向ける相手は? 「投資拡大」、いわゆる「成長と分配の好循環」に向けて、投資拡大の必要性が謳われて久しいですが、これについても様々な議論がありました。日本アイ・ビー・エムの山口明夫社長は製造業やサービス業などの「国内回帰」を訴えます。 「やはり、国内でつくらなければいけない、モノでもサービスでもソリューションでも。安いモノを海外でつくって輸入をしてきた、そのメリットを享受してきた30年間の結果として空洞化が起きた。もっともっと国内でいろいろなものをつくれる。企業が自ら国内に投資をする姿勢を見せない限り、外から“日本が魅力的”という形では受け入れらけないのではないか」 山口社長はその上で、海外でソフトウェアをつくっている従業員3,000人を国内に移したことを明らかにしました。 一方、新浪代表幹事はアジアにおける日本の立場に関し、厳しい認識を示しました。「日本は2023年度のFDI(海外直接投資)は187億ドル、シンガポールは1412億ドル……人口が小さいとかそういうことではなくて、やる気があるかどうか。つまり、日本国は世界の投資の中心になるような国ではなくなっていることを自覚し、どうしてこうなっちゃったのかということを考えないと。シンガポールに何と8倍負けている。アメリカ、ヨーロッパに追い付き追い越せ、あれを見て何か考えろというのではなくて、もうアジアに負けているということを理解してやっていかないと、シンガポールを見習わなきゃだめだ」 シンガポールは人口が約564万人で日本の20分の1以下、国土も東京23区よりやや大きいぐらいの小さな国です。しかし、そんな規模の国が膨大な投資を呼び込む国へと変貌しています。 その強みはまずは金融。イギリスのコンサルタント会社が実施している世界の国際金融センターの実力を評価する調査で、最新の実力ランキングは1位ニューヨーク、2位ロンドン、そして3位がシンガポールです。