中学生が自由な発想で考える 「放射線」や「災害」の現場で働くロボット【STEAM教育のきざし】
未来を生き抜く力を育む
この日の授業を振り返って、青木さんは「生徒たちにとって『ロボットと言えばペッパーくんや猫型ロボット』といった断片的なロボットのイメージだったが、加藤さんの話を聞いたことでより具体的になったようです。『プログラミングによるソフトウェアだけといった形のないものもロボットと考えられると知った』という気づきを得た生徒もおり、3学期に予定しているロボット制作に向けて大きなヒントになったと思います」と評価する。
各教科での学びを現実社会の課題解決に結びつけ、「これから自分たちはどう生きるか」を考えることもSTEAM教育が目指すところである。その一方で、青木さんは公立学校でSTEAM教育を推進することに課題も感じているという。
「生徒たちが自分の好きなことをとことん追求する時間を持てないというのが公立学校での現状です。音楽が好きでずっと音楽をやりたくても、体育の時間には体育をやらなければなりません。教科の均一性を重んじる義務教育の目的達成と、個人の興味関心を追求できる時間の両立をどう考えるかが、次の課題ではないでしょうか」と青木さんは話す。
たとえ今は十分ではないとしても、「自分で選択できる探究学習の時間が学期に数回でもあることが大事」だと青木さんは考えており、「少しずつでも継続していきたいですね」と意欲を見せる。未来を生き抜く力を育もうという、義務教育の現場での挑戦が始まっている。
プロフィール
青木久美子 世田谷区立千歳中学校 主任教諭 東京理科大学理学部第二部物理学科卒業。世田谷区立中学校の教員として長年にわたり理科教育に携わる。千歳中には2013年に赴任した。近年は生徒たちが自ら社会課題へのアプローチを考える探究学習の推進に努める。
加藤信之 筑波大学人間学群卒業。2023年までシステムエンジニアとして活躍。金融に関わるシステムの開発や保守に携わった。青木さんの家族と友人であることから青木さんとは以前から面識があり、今回ゲストティーチャーを引き受けることになった。