中学生が自由な発想で考える 「放射線」や「災害」の現場で働くロボット【STEAM教育のきざし】
総合的な学習の時間で通年講座を実施
青木さんが担当する講座は「放射線下や災害現場で働くロボットを考える」がテーマで、全10回で構成されている。千歳中学校では総合的な学習の時間を使った通年講座が各学年で8講座ずつ開設されており、青木さんの講座もその1つだ。生徒は自分の興味関心をもとに講座を選んで参加する。講座はすべて国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に関連するテーマで、各担当教師が自由な発想で組み立てている。
テーマの設定で青木さんが念頭に置いたのは、中学1年の理科で学ぶ「地震や火山による災害」、中学2年の理科で学ぶ「放射線」。それらの学習項目に、小学校の算数で学ぶ「プログラミング」と、生徒たちが興味を持ちそうな「ロボット」を掛け合わせた。「瓦礫で人が入れない災害現場や、人間や生物にとってリスクの高い放射線下で、ロボットが活躍していることを生徒はあまり知りません。そこを結びつけて考えてもらえたら、私としてはうれしいですね」と青木さんは話す。
講座の流れとしては、1学期に生徒たちはまず、災害現場で人を助けるレスキューロボットや、東京電力福島第一原子力発電所の事故現場で作業するロボットなどの記事を「サイエンスウィンドウ」で読み、ロボットが活躍する現状について調査した。夏休みの間に「どんなロボットを作りたいか」を考えて、それをもとに2学期は「放射線下で働くロボット」「災害現場で働くロボット」の2グループに分かれて話し合った。また、市販の教材で、実際にロボットをプログラムで動かしてみる体験もした。3学期にはいよいよ、自分たちが作りたいロボットをプログラミングして発表する。これがこの講座のゴールだ。
社会の「本物」に触れて新しい視点に出合う
3学期のロボット制作を前に、自分たちのアイデアを具現化するためのヒントを得ようと設けられたのが、この日のゲストティーチャーの授業だった。ほんの半年ほど前までITエンジニアとして活躍していた加藤さんがゲームや教育、医療など身近な分野でのプログラミング事例を紹介すると、「これにもプログラミングが!?」と興味津々の生徒たち。「では、家の中でプログラミングが使われているものはあるかな?」と加藤さんが問いかけると、「お風呂」「ルンバ(ロボット掃除機)」「洗濯機」と教室のあちこちから声が上がった。