キジムナーみたいな妖怪に「最近会ってないね」というおばあちゃんがいて…日本と海外の“裏”取材を語る【丸山ゴンザレス×八木澤高明対談】
色街、娼婦、殺人事件などをテーマとしたノンフィクション作品をこれまで書いてきた作家・八木澤高明さん。オールカラーの最新刊『忘れられた日本史の現場を歩く』(辰巳出版)では、陸の孤島に住む呪術師、本州にあったアイヌ集落などを訪ね歩き、ルポしています。 本書の発売を記念し、ジュンク堂書店池袋本店で対談が行われました。対談相手は、テレビ番組『クレイジージャーニー』でお馴染みのジャーナリスト・丸山ゴンザレスさんです。以下では、この対談の模様をお伝えします。 (構成:松本祐貴)
ほかの取材をしていることが次のネタのキッカケになる
丸山:初対面は、10年ほど前に八木澤さんの取材を雑誌でしたときですね。場所は、足立区の竹の塚にあるレトロな喫茶店でした。駅前で大量のシケモクをビニール袋に入れていたおじいちゃんがいたのを覚えてます(笑)。八木澤さんは、朗らかで柔らかいけど、芯がしっかりしている印象を受けました。そこからお付き合いがはじまり、1年後には単行本『青線』の編集も担当しました。 八木澤:僕の丸山さんの第一印象は、スゴく真面目な人、でした。『クレイジージャーニー』などでのご活躍も、丸山さんの真剣さ、真面目さがあってのものだと思います。 丸山:こんなところでお褒めいただくとは(笑)。あのときは取材と直接関係ない話をたくさんしましたね。 八木澤:一世代前ならベトナム戦争など大きな“現場”があり、社会にも取材者に対する理解があった。でも今は取材者も自己責任などと叩かれる時代になっている――。そんな話をしましたね。僕は海外に行ってもたたずんでいるだけですが、丸山さんは自ら、世界の犯罪の現場に飛び込んでいきました。ルーマニアのマンホールとかね(笑)。 丸山:僕は過去のいろいろな作品を参考にしています。マンホールでは、早坂隆さんの『ルーマニア・マンホール生活者たちの記録』(中央公論新社)です。それと、椎名誠の娘さんである渡辺葉さんが翻訳した『モグラびと ニューヨーク地下生活者たち』(集英社/著者:ジェニファー・トス)を読んで、ニューヨークの地下にも行きましたね。僕自身がまだ読んでいなければ、どんな本でも新刊だと思っています。 八木澤さんが言う“現場がない世代”とも言えますが、どこに行ってもいいという世代とも思えます。でも、ネタにならない場所やテーマに手を出すと貧乏暮らし一直線です(笑)。だから、僕は日本人が興味の持ちそうなネタを狙ってきました。根底には先人たちの記録があります。この八木澤さんの新刊『忘れられた日本史の現場を歩く』はどのようにネタを探したんでしょうか? 八木澤:例えば、埼玉県秩父の無戸籍者の話だったら、神戸大学のデータベースに大正時代の新聞が保管されているのを見つけて、そこから調べたんです。山口県岩国市にいたインドから帰ってきた“からゆきさん”に関しては、たまたま別取材で訪ねた北九州市門司の古本屋で、そのことについて書かれている本を手に入れました。ほかの取材をしていることが次のネタのキッカケになることが多いですね。 丸山:古本屋は重要ですよね。80年代ぐらいまでの古本だと現場の住所が書いてあります。事件や怪談などの現場にたどり着いたけど、「本当にここだろうか?」と悩んだとき、確実にわかる住所は偉大ですよ。