過保護な親になってない?「不登校」を解決するには、親が子どもを“精神的に手放す”べきワケ
子どもから精神的に自立するには
不登校の解決に向けては、「自己受容を深める」とともに「子どもから精神的な自立をする」ことが大事です。 スイスの精神科医・心理学者であるカール・グスタフ・ユングの“母親殺し”という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ユングは人間が心理的に成長していくプロセスにおいて、一人前になるために克服しなければならないテーマを、“母親殺し”という言い方で表現しました。 もちろん、実際に殺すという意味ではありません。親と子が互いに一人の自立した人間として認め、尊重できるようになることを自立と呼ぶのだとしたら、そうなっていくプロセスにおいて、子ども側が心理的に親殺しをして、親を超えていく(親の考えを否定し、自分の考えで物事を進めていく)経験をすることが必要だというわけです。 もし子どものことを思って、先回りをして行動してしまっているのであれば、一度、子どもに任せて“親を超える”チャンスをつくってみてください。そのためには、親自身が「自分は自分、子どもは子ども」という境界線を引く必要があると思うのです。 子どもはいずれ、自身の力で生きていかなければなりません。だからこそ、子どもを一人前に自立させていくためには、親が子どもを“(精神的に)手放す”ことが必要なのです。 そうでないと、いつまで経っても親は子どもの問題を自身の問題として悩み、常に見守り、先回りして、子どもがつまずかないような行動を取り続けなくてはならなくなってしまいます。これでは、お子さんが自立することもむずかしいでしょう。 一体感が強い親子の場合、なかなか手放すことができないかもしれませんね。そんな人におすすめしているのが、“紙に子どもの名前を書き、くしゃくしゃに丸めて捨てる”という方法です。「そんな子どもだましな……」と思われるかもしれませんが、意外と効果的です。ぜひ試してみてください。 子どもを一度「手放す」と決めると、覚悟ができます。すると、考え方が今までとガラッと変わっていきます。子どもの問題が自身の問題ではなくなっていくので、いちいち悩まなくなりますし、子どもの言動に一喜一憂しなくなります。極端な話のようですが、悩み苦しんでいる不登校の問題でさえもご自身の中で問題ではなくなることも少なくありません。もちろん、「子どもがつまずかないために」という先回りした言動などもなくなっていきます。 子どもとしても、親が精神的に離れたことで自然と自立に向かいます。はじめは「見放された」と感じる子もいたりしますが、それでもやがて自立していきます。「自分で何とかしないと動かないんだな」という気持ちになっていくからです(ちなみに私の場合は、「むしろ自分を手放してほしい、解放してほしい」と思っていたタイプでした)。 実際に、これまでカウンセリングをさせていただいてきた親御さんの多くが、お子さんから精神的な自立をすることで変わっていきました。 不登校などの問題も、親御さんの中で問題でなくなっていくことと比例するかのように、目に見える形で解決していく場合も大変多かったです。「親が子どもからの精神的自立を心がけることなく解決したケースはゼロである」といっても過言ではないほど、とても大切なポイントとなります。