名古屋に「コストコ」は来る? 来ない? 住民が抱える「土地区画整理」の影
日本の街並みを形づくってきた「土地区画整理事業」。それが人口減少、地価下落の時代に行き詰まりを迎えている地域があります。 かつて「白い街」を築いた先駆者・名古屋はなぜ行き詰ったのか? 土地区画整理事業の現在 名古屋市北東部の郊外に位置する、守山区の中志段味(なかしだみ)地区は、地元の土地区画整理組合が100億円を超す借入金を抱えて破綻状態。この先も30年で300億円近くの資金不足が見込まれる事業を立て直すため、地元と市は再建計画を練っています。 ただ、保留地の売却や事業の縮小をめぐり課題は山積。解決の糸口や着地点はあるのでしょうか。
「アピタ」から「コストコ」へ
「コストコ」が来るか来ないか──。守山区でここ数年、住民が気をもむ関心事です。 アメリカ発の会員制大型量販店であるコストコは、名古屋初出店の地を探って2年前からアメリカ本社の幹部が中志段味の保留地を視察するなどしてきました。 今年9月にはケン・テリオ日本支社長が名古屋市役所を訪れ、河村たかし市長とも面談。「名古屋1号店をスムーズに早くオープンさせたい」と前向きな姿勢を示していました。 現地は、かつてユニーが総合スーパー「アピタ」出店を目指して市に土地利用計画案も出していた土地。しかし、周知の通りユニーはファミリーマートと経営統合の末、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」グループの子会社となることが決まりました。 中志段味では長年、道路沿いに立っていた「APITA出店予定地」の看板がすでに外されています。地元の中志段味特定土地区画整理組合は、一時ユニーの親会社となった伊藤忠商事を介してコストコ側と交渉を続けており、土地の売買契約などが最終調整段階であるのは間違いありません。 ただ、周辺道路の渋滞対策や、コストコ側が利用を見込む土地の周辺に産廃処分場の跡地が含まれることなどから、本契約に向けてはまだ紆余曲折が予想されます。コストコホールセールジャパンの窓口も取材に対しては「まだ具体的な見通しは決まっておらず、お伝えできることは何もない」と回答。組合内部にも慎重意見は残ります。 「早く話がまとまるならと焦る気持ちは分からないでもない。ただ、買ってもらえるならどこでもいいと、駆け込みのような形で決めていいのか」と疑問を呈する組合関係者も。「コストコの件も、ほとんどの住民にはその協議内容や過程が知らされていない。そもそもなぜ組合が破綻状態に陥ったのか、その責任の所在はどこにあるのか、すべてがうやむやのままだ」