名古屋に「コストコ」は来る? 来ない? 住民が抱える「土地区画整理」の影
事業の危うさをひた隠しにした名古屋市
問題は、たとえコストコが出店しても、事業全体の抜本的な再建にはほど遠いことです。 中志段味の土地区画整理事業は1995年に地元の地権者2240人によって組合が設立されスタート。当初はナゴヤドーム40個分の192ヘクタールの土地を対象に、総事業費462億円で道路整備などを進め、保留地は304億円を処分して資金を捻出する計画でした。保留地とは、地権者がそれぞれの土地の一部を供出して確保する商業用地などです。 しかし、もともとの宅地化率の高さや、高低差や亜炭鉱跡など開発する上で数々の悪条件があったために工事は難航。さらにバブル崩壊後の地価下落も響き、保留地を金額ベースでも面積ベースでも予定の100分の1も処分できていなかった2年前の時点で、組合の借入金は100億円を超えていました。コストコが出店を探る土地も、当初処分を見込んでいた保留地面積の15%足らずです。組合は「もはや自助努力では無理」として、実施主体を民間の組合から市に切り換えるよう求める要望書を提出するなどして、破綻寸前の状態が明るみに出ました。 なぜここまで事態が悪化してしまったのでしょうか。昨年度、名古屋市が全日本土地区画整理士会に委託してまとめた報告書では、驚くほどずさんで強引な事業の進め方が明らかにされています。 市と実務を担う外郭団体の名古屋都市整備公社(現・名古屋まちづくり公社)は、事業認可時点から多くの課題があると認識していました。にもかかわらず、市は事業の見込みが不十分な事業計画を市主導で作成した上で、地元の地権者からの同意書を公社に集めさせ、8割に満たない同意率で組合設立を認可しました。 2000年に国から組合の経営状況実態調査の照会が市にあった際、公社は「118億円」の資金不足の可能性を示す資料を市に提出しましたが、市はその結果を「シミュレーションの一つ」だとして、国には「38億円」が不足するという別のシミュレーション結果を報告しました。その翌年も「89億円」の不足という資料があったにもかかわらず、「62億円」の不足として国に報告しています。 報告書には「市は、事業が遅れているので、進めなくてはいけないという認識があり、上層部からも何とかするようにとの命令があった」などの職員の証言があります。 このように当局が事業の危うさをひた隠しにし、組合は将来的な市の支援に期待して問題を先送りしているうちに大幅な資金不足へと陥りました。報告書は市、公社、組合が「いずれも事業に対する主体的な意識を持たず」「それぞれの当事者が責任ある対応を行わなかった結果」だったと結論付けています。 この問題は市議会でも追及され、今年2月の本会議で堀場和夫副市長は「結果を重く受け止める」と答弁、市が主体となって組合と今後の事業再建計画を練る方針を示しました。 ちなみに河村市長は同じ質疑の中でこう述べています。 「基本的には、志段味のあの辺はええところですから、きちっとやればまず保留地は売れると思いますよ。住むにはええところですよ。だで、きちっとやっていけばものにはなる」