ニーチェは「『世界』は存在しない」と主張したのか?…ニーチェの認識論と存在論の正しい理解
ヨーロッパ哲学の最大の難問=認識論の謎を解明した20世紀哲学の最高峰といわれるフッサール現象学。 【画像】フッサールの「不運」…「あの愛弟子」の学問的裏切り 難解と言われるフッサール現象学だが、その本質を「適切に」追いつめれば、根本構図はきわめてシンプルだ。誤解にまみれた予備知識や先入見がなければ、誰でも把握できる。 現象学の根本方法は、フッサールの主著『イデーン』の解読と正しい理解なしには把握できない。このたび、哲学者の竹田青嗣氏と、早稲田大学商学学術院教授の荒井訓氏が、現象学のエッセンスを一般読者が理解できるように可能なすべての努力を払った『超解読!はじめてのフッサール『イデーン』』が刊行された。 この本が、まず読者に伝えるのは、フッサール現象学が解明しようとした「認識論」の正しい理解である。 本記事では、「「カントがニュートン」なら、「ニーチェはアインシュタイン」?…認識論と存在論のパラダイムを本当に転倒させた哲学者はどちらだったのか」につづき、ニーチェの認識論と存在論について述べる。 わかりやすくなるように一つの補助線をひいてみよう。 (本記事は、竹田青嗣+荒井訓『超解読!はじめてのフッサール『イデーン』』(12月26日)から抜粋・編集したものです。)
マダニの一生
ユクスキュルという生物学者が、マダニの生態を研究してつぎのような説を出している。 マダニは、卵からかえると木に登り、適当な枝にしがみついてその下を哺乳動物が通るのを何年でも待つ。哺乳動物が通るのを感知すると手を離して落下し、うまくその背中に落下できた個体は、毛の中深く潜り込んでその血を吸い、成長し、また卵を産む。それがマダニの一生である。 さて、マダニは光覚、温覚、嗅覚(血の臭い)という三つの感覚しかもたないが、その生存を維持するのに、この三つの感覚だけで十分である。 つまりこうなる。マダニにかぎらずおよそすべての「生き物」は、このように自分の感覚(身体・欲望)に応じた仕方で、世界を生成、分節している。マダニは感覚が素朴なために世界を正しく認識できない、などとはいえない。どんな生き物もその「力への意志」に応じた仕方で(相関的に)世界を「生成」している。 人間も基本の事情はもちろん同じである。しかし、人間には大きな違いがある。
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