樋口恵子「高齢者ひとりでも大丈夫」と思いたいけれど、全然大丈夫じゃないと老いて実感。同居家族がいても「おひとり死」はありうることと心得るべし
平均寿命が伸びる一方で、長生きによる「老い」に直面する場面も増えています。以前と違う自分に戸惑ったり、忘れてしまうことに恐怖を感じている方もいらっしゃることでしょう。91歳になった今でも執筆活動を続けている、評論家・東京家政大学名誉教授の樋口恵子先生は<老いのトップランナー>として、「自分の老いを実況中継しながら、皆さんにお伝えしてご一緒に考えていきたい」と話します。その樋口さん、「ひとりでも大丈夫と思いたいけれど、全然大丈夫じゃなかった」と言っていて――。 【写真】「往診しないのであれば本当にかかりつけ医といえる?」と話す樋口さん * * * * * * * ◆究極はみんなひとり 昔、雑誌の取材で「これからの高齢者は『ひとり力』がないと生きていけない」とお話ししたことがありました。 だって、いつかはひとりになっちゃうんですもん。 でも、自分が老いて実感しました。ひとりでも大丈夫と思いたいけれど、本当は全然大丈夫じゃない、と。 それでも人間、究極はみんなひとり。 たとえ大家族であったとしても、おのおのに意思があり、結局は自分ひとりです。寂しくもありますが、そう思って生きていくしかありません。
◆ひとり時間の過ごし方 さて、私のひとり時間はというと、寝転がって本を読んだり、新聞を読んだりしています。そうすると、娘に「起きろ!」「食べろ!」としかられるのが常です。 仕事に関係のある本もよく読みます。一遍読んで、二遍読んでから「へえ~」と思ったりすることもあります。 昔は藤沢周平が大好きでした。あの世代の作家としては、という前置きが必要ですが、男尊女卑のジェンダー意識から解放されて、自立したいい女性がたくさん出てきます。 もちろん作品は作品として読みますから、山本周五郎や吉川英治、剣豪小説を書いている五味康祐なども面白がって読んだものですが、やっぱり藤沢周平が面白い。 ドラマはあまり見ませんが、「三屋清左衛門残日録」はさすが藤沢周平、気に入りました。 新聞は3紙契約しています。寝転ぶ時間がないときは2階の自室から1階へ下りていって、新聞をチェック。隅々まで目を通すとはいかないけれど、とにかく3紙には全部目を通します。 何といっても新聞くらい面白いものはない。今でもそう思っています。
【関連記事】
- 樋口恵子 ピンピンコロリが理想でも、現実はそう簡単にいかない…ドタリと倒れてから「さてどうやって生き延びるか」こそが大きな課題
- 樋口恵子 補聴器で医療控除が受けられず「老い」にはお金がかかると実感。心配してもしょうがない、老いが来たら「来た!」と思うしかない
- 樋口恵子 91歳の私は「年齢なりにボケている!」。恨みつらみも豊かな人間関係のひとつ。残っている記憶力はプラスのほうに使いたい
- 樋口恵子 無謀と言われても84歳で家を建て替えたワケ。エレベーターに電動雨戸。この家で懸命に生き、いよいよになったら施設で介護を受ける選択肢も
- 樋口恵子「老年よ財布を抱け」。最後まで数百万円くらい自分で自由に出し入れできるようにしておくほうが心も広くいられるハズ