自動車会社の決算書の読み方教えます
台数は前年割れの日本が利益では貢献するワケ
内訳を見ると「台数・構成」が9800億円。これがほぼ半分を稼ぎ出している。販売台数は対前年度で107.0%。端的に言えばトヨタはより高い価格の車種やグレードのクルマをたくさん売った、ということだ。次に大きいのは「補給・用品/中古車/コネクテッドほか」で、1600億円。ここは基本的に販売店の頑張りであり、ざっくりした言い方をすれば、新車を売ったあとのメンテナンスなどのビジネスを上手に回したことになる。 どこで利益を出しているのかをチェックできるのが「所在地別営業利益」だ。伸びしろは日本が最も大きい。トヨタは他社が現地生産を増やす中で、国内生産300万台を死守すると宣言している会社である。日本で製造したクルマを海外に輸出すれば円安は当然プラスに働く。さらに言えば、グローバルで見て、部品不足問題がいち早く解決したのは日本であり、国内のサプライチェーンの強靭(きょうじん)さを示した。 優秀で勤勉なサプライヤーの存在を証明した形だが、その結果米国での生産遅れ分を日本が引き受けて肩代わりし、車両を米国に送った。所在地別営業利益で日本が特別に大きく膨らんでいるのは、この肩代わり分と為替差益の合わせ技によるものだ。 上の点線で示される連結販売台数では日本は前年割れしている。ただし、これは販売台数であって生産台数ではない。すでに述べた通り、実際は日本で造ったクルマが北米に輸出されているので、販売台数のカウントでは117.0%の北米に含まれている。むしろそれだけ販売台数が伸びている北米で営業利益の伸びがさほどではないのは、日本生産分は日本の利益に乗るからだ。 ということで、2024年5月発表の各社決算を見るポイントを解説した。個社ごとの決算解説は、今月中に筆者のnoteで無料公開する予定だ。
池田 直渡