「鉄道廃線は地方を孤立させる」赤字ローカル線の存廃議論で欧州から学ぶべきこと オランダの鉄道社員「鉄道インフラは民間ビジネスという考えに違和感」
「二つの感情があります。一つは確かに変化が起きたということ。一方で、もどかしさも感じます」 ―どういうことでしょうか。 「10年前、私はJR四国で導入できるパターンダイヤを独自に作成し、効率よく列車を運行できることを参考になればと思い、示しました。しかし、返ってきたのは『お客さまは改正を望んでいない』『現状のインフラ設備では難しすぎる』といった消極的な反応でした」 「パターンダイヤは効率よく列車を運行できるだけでなく、職員や車両への負担も減らせます。何度もメリットを説明するも、堂々巡りの議論が続きました。10年かけてようやく変化が見えてきたといったところです」 ▽日本の鉄道は保守的すぎる ―日本の多くの鉄道会社と意見交換を重ねたとのことでした。全体的に見た日本の鉄道会社への印象はありますか。 「日本の鉄道は世界で最も優れているため、変化を望まないという基本的な姿勢は理解できます。しかし、保守的すぎるとも思います。人口が減少し、高齢化も進んでいる状況は喫緊の課題であり、各社とも変化する必要に迫られているのは間違いありません。ただ、その焦りは見えてきません。今は経営が比較的うまくいっているJR東日本や東海でも、将来的には、JR北海道や四国と似たような状況になってしまうのではないのでしょうか」
▽国が積極的に介入を ―欧州と日本の鉄道事業の異なる点はどこにあると考えますか。 「ヨーロッパも日本と同様、かつては民間企業が運営していました。しかし、経営が悪化したため、国が介入しました。1930年代にはほとんどの国で国営化されました。鉄道を存続させるためには、政府が積極的に関与するべきであるという考え方が根付いています」 ―日本で取材をしていると、鉄道事業は民間ビジネスであり、会社が経営改善やインフラの整備をするべきだと考える人が少なくない印象です。 「鉄道事業は民間ビジネスであり、会社が努力するべきだという考え方は、私にはとても違和感があります。日本でもたくさんのバスやトラックが走っていますが、それぞれの会社が道路の整備も行っているのでしょうか。高速道路や港湾、空港と同じように、鉄道インフラの整備も政府の役割だと考えるのは不思議なことではありません」 ▽鉄道は社会の中枢