「鉄道廃線は地方を孤立させる」赤字ローカル線の存廃議論で欧州から学ぶべきこと オランダの鉄道社員「鉄道インフラは民間ビジネスという考えに違和感」
―赤字ローカル線を巡り、日本では存廃議論が加速しています。移動する権利を基本的人権と位置付けて、政府が積極的に介入する欧州から学べることは多そうですね。 「廃線は地域を閉ざすことでもあり、最悪の選択です。1960年代、ドイツやイギリスといったヨーロッパの多くの国で、採算の取れない多くの路線が廃止されました。しかし、これは結果的に地方を孤立させることにつながりました。その反省から、今は路線を復活させる流れになっています。コスト面から考えて、廃線にした路線を復活させるのは非常に高くつきます。日本に同じ過ちを犯してほしくはありません」 ―では、議論はどうあるべきなのでしょうか。 「どのようにして鉄道を残すのかを議論するべきです。人口減少や高齢化の進む人口において、車は解決策になりません。バスについても乗り方や料金体系などが統一されておらず、観光客など地域に詳しくない人からすれば魅力的な交通手段ではないのです。今後、利用状況の少ないローカル線の利便性を高めることは可能ですが、採算が取れるようになることは決してありません。だからこそ、政府の介入が必要なのです。鉄道は公共交通、ひいては社会の中枢を担います」
× × × 【一口メモ】 再構築協議会 赤字が続くローカル鉄道の再編に向け、地方自治体または鉄道事業者からの要請を受けて国が設置する。国は協議が進むよう積極的に関与し、再編案の実現を財政支援する。廃線を警戒する自治体と廃線を視野に入れる事業者側は、立場の違いから議論時に膠着する。こうした手詰まり状態を打開させる狙いがある。 JR四国 JR旅客6社の中で最も規模が小さい。2022年度の線区別収支は、岡山県と香川県を結ぶ瀬戸大橋線を除いた全線で赤字。同様に経営が厳しいJR北海道は全21線区で赤字だった。いずれも国から経営改善の指導を受けている。