「使わない避妊具を配るなど、発展途上国へのアクションは、たいてい的が外れている」銅冶勇人氏が語る【アフリカの現状と支援の本質】
もう一つ注力したのは、給食を提供すること。なぜなら“給食が食べられるなら、学校に行ってもいいよ”となるからです。子どもたちはその給食を半分以上残して持ち帰り、家族に分ける。学校に通ってもいいんだよというわかりやすい環境を作ってあげる。これがものすごく重要で、現地で学んだことです。 我々の学校でも、子どもたちの夢の数が増えていることに成果を感じています。最初は、子どもたちが300人くらいいても、夢は4つくらいしかなかった。今はみんなが多くの夢を描くようになり、それはまさしく教育の力、いろいろな世界を知れているからこそ、夢が描けるようになるわけです」 さらなる雇用創出を目指し、食農プロジェクトやクリエイターの育成にも取り組んでいる。 「地域によって差はありますが、土と水をしっかり担保できれば、多くのの可能性がある。給食を提供することを国の法律としてまとめていきたいと思っていますし、学校の敷地内に畑を作り、子どもたちと一緒に材料を育て、そこから給食の材料を捻出する。農業が安定すれば、雇用も生まれます。 ガーナでは冷蔵庫を持っているお家が少ないので、保存食が重要なんですね。そこで缶詰工場を作り、現地で作った食材で産業を生み出すというプロジェクトも立ち上げました。今、宮崎市の皆さんとコラボレーションして取り組んでいます」
「クリエイター育成に関しては、世界にどう発信できるかが課題。去年学校を開講し、デザインコース、カメラマンコース、映像制作コースをつくり、今150人くらい通ってくれていますが、技術だけではなく、そこからどうビジネスに発展させていくかというところまでレクチャーしています。弊社の商品も、テキスタイルはデザイナーたちが描いてくれたものを商品化していますし、ブランドで使用する写真や映像は全部クリエイターたちが作ってくれています。そこにポテンシャルを感じてもらって、さまざまなビジネスが広がっていけばいいですね」 銅冶さんが魅了された、アフリカの人々、文化の素晴らしさはどこにあるのか。 「最高ですよ。元気で生真面目で、身近なものに幸せを感じることを教えてくれる。彼らは僕の先生でもある。自分の幸せも大事にしているけど、常に助け合う気持ちがあるし、いつも朗らかに笑っている。みんなで一つのことを喜び合える…そんな国民性は、僕たちが失いつつあるものを教えてくれます。固定概念にとらわれない彼らは、自由で素敵です。 僕もまだアフリカの人たちの気持ちを100%わかっているわけではないので、まだまだ学ばせてもらっています。変わらなきゃいけないのは、自分たちの生活や自分たちの考え、そして、自分たちは正しいという思い込み。『CLOUDY』として、皆さんに少しでもそんなことを感じてもらえれば…うれしく思います」
【銅冶勇人(どうや・ゆうと)プロフィール】 1985年、東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部を卒業し、2008年「ゴールドマン・サックス証券」に入社。2015年に退社。2010年にNPO法人「CLOUDY」を、2015年にアパレルブランド「CLOUDY」を設立。 (取材・文/蓮池由美子)
テレ東プラス