「使わない避妊具を配るなど、発展途上国へのアクションは、たいてい的が外れている」銅冶勇人氏が語る【アフリカの現状と支援の本質】
銅冶さんが毎年現地に通い続けたことで、地域の人々は徐々に心を開いていく。次第に社会課題を教えてくれるようになった。 「例えば多くの団体が、性教育と言ってはコンドームのような避妊具を配るわけです。配るにも人を要する、つまりはお金がかかるわけですが、みんな配って達成した気になっている。でも実際は、避妊具の位置づけが先進国とは異なるため、せっかく配っても捨てられてしまい、課題の解決にはなっていません。 彼女たちがなぜ、パートナーに避妊具を付けることを依頼できないかというと、そこにはさまざまな理由が存在しますが、例えば“相手に嫌われたくない”という思いがあります。 また、日本で見えている子どもたちの労働シーンにも誤解を招く一端があります。途上国においての児童労働は、重要な教育を成し遂げているという言い方もできる。もちろん、子どもを奴隷のように扱うことは絶対にしてはいけません。でも、学校がない地域で、子どもたちが何もすることがないのに児童労働がダメというのは間違った見方。農業同様、働くことが教育につながることもたくさんあるので、背景や現地としっかり向き合って見つめないと、間違った情報が広がってしまいます。グリーンウォッシュ(環境配慮をしているように装いごまかすこと)と一緒ですね。 僕らが感じている問題と、現地で掲げられている問題というのは圧倒的なギャップがある。単なるパフォーマンスでしかない部分が多いので、そうじゃないんだよと修正するのが、メディアの皆さんや我々の役割でもあるのではないでしょうか」
固定概念にとらわれず、みんなで一つのことを喜び合える…そんな国民性は、僕たちが失いつつあるものを教えてくれる
課題の本質を追求したい…。銅冶さんは、NPO法人に続き、2015年にアパレルブランド「CLOUDY」を設立。営利事業として展開し、その利益をアフリカの支援に還元している。なぜ、アパレルに目を向けたのか。 「普通に教育をつくったところで人々は生きていけないということに気づかされ、中でも、女性が置かれている立場が圧倒的に弱いことが分かったからです。学校を卒業したばかりの子どもたちが娼婦や妊婦になってしまうケースもあり、“生きる上では教育以上に雇用が大事”という結論に行き着きました。 現地で教育を受けていない、ないしは十分な技術を持っていない人たちでも、トレーニングを積めば仕事に就ける…そういう雇用を作らなければならない。しかもしっかりと数字を作れるビジネスを」 「現地の人々や文化を尊重できるものをビジネス化したいと考えていた中で、アフリカンファブリックという伝統の衣装に出会いました。庭先でお母さんたちがやっている縫製作業を目にし、“これなら学校に行っていない女性でも仕事に就ける可能性がある”と思いました。世界のファッションマーケットで、まだアフリカンテキスタイルのフォーカスが広がっていないとするならば、これをいかに変化させてマーケットに届けることができるか。ビジネスチャンスがあると考えました」 雇用を生み出すとともに学校も創立した銅冶さん。大切にしたのは“理想を押し付けるのではなく、一緒に作り出すこと”だった。 「地域の人たちと時間を共にし、一緒にクリアしていく…これに注力しました。最後は、僕らが携わらなくても成立することがゴールだと思うので、目指すビジョンを地域と一緒に作っていく。それでも課題はたくさんあります。 せっかく学校をつくっても、子どもたちはすぐに通わなくなってしまうんですよね。そもそも学校を知らない地域では、その重要性がわからない。急に学校に通えと言ったところで、明日のお金にならないなら働いた方がいいとなってしまうわけです。 教育そのものの重要性や価値観も、国によって違います。まずは親が継続して通わせることができる環境を作り上げること、いかに雇用につながるのかを理解させることが大切です。