<捲土重来>’20センバツ明徳義塾 チームの軌跡/下 挑戦者の熱い闘志で /高知
「最後まで全力で行け。向こうも勢いがあるから、声から負けんように」。2019年11月2日、秋季四国地区大会準決勝。高知中央とのリベンジマッチの直前、指導陣が選手たちに声をかけたが、それ以上に鼓舞する必要は無かった。「やったるぞ」「絶対に勝つ」。全員が燃えていた。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 県3位でなんとか四国大会出場を決めた後、馬淵史郎監督(64)は選手たちに「チャレンジャー精神を持って『自分たちは弱いんだ』と思ってやれ」と気合を入れた。ここから選手たちの練習への取り組み方が大きく変わった。ミスをしても、すぐに気持ちを切り替えるようになり、常に雰囲気を盛り上げる努力も絶やさなかった。「四国大会まであっという間だった。本気になって練習した」と合田涼真選手(2年)は振り返る。 四国大会が開幕すると、チームは1回戦、準々決勝ともに8―1で勝利。ついに、再戦を願った高知中央との試合にたどり着いた。 初回、新地智也投手(2年)が相手打線を3者凡退に抑える抜群の立ち上がりを見せると、打線はその裏に一挙8点を奪った。堅守も光った。二回、米崎薫暉(くんが)選手(1年)がショートゴロを落ち着いてさばき、ダブルプレーに仕留め、良い流れを作った。さらに、県大会では先発メンバーから外れていた5番の新沢颯真選手(2年)が満塁本塁打を放つなどこの日は7打点と大暴れ。投手を中心に堅い守りから攻撃のリズムを作る明徳義塾らしい試合運びで圧勝した。 試合終了後の控室。馬淵監督は「悔しい気持ちを持ち続けてやってたら今日みたいな試合ができる。明日(決勝)は良い試合をするんじゃない、勝ちに行く。ここまできたら東京に行くぞ」と鼓舞。続けて「今日は全員よくやった。ほめてやる」とねぎらうと、選手たちのほおがゆるんだ。 翌日の尽誠学園(香川)との決勝戦も明徳義塾は8―1で危なげなく勝利。馬淵監督の宣言通りに東京都で開催される明治神宮大会への出場を決めた。終わってみれば圧倒的な強さで四国大会を制する結果となったが、鈴木大照主将(2年)は「優勝できるとは思っていなかったので、うれしいです」と笑顔を見せ、謙虚な姿勢を崩さなかった。 ◇ 1月24日、センバツ出場校の発表日。㟢本宏明校長から出場決定を告げられると選手たちの顔から笑みがこぼれた。そして「これで昨夏のリベンジができる」「どうやったら甲子園で勝てるか考えて冬の練習に取り組んできた」と真剣な表情で語った。 悔しさを胸に自らの弱さと向き合い、一つにまとまった今年の明徳義塾。巻き返しに成功した勢いはとどまるところを知らない。