女子スラックス制服「自由に選択」3年で急増 静岡県内公立高15→85校 防犯・防寒を理由に広がる
性別を問わない学校制服の見直しが全国で進む中、静岡県内でもスラックスやスカートを自由に選択できる動きが拡大している。全日制の公立高全90校(分校を含む)のうち、「女子スラックス制服」を選べる学校は2025年4月1日時点で85校(約94%)に達する見通しだ。静岡県教委による3年前の調査では15校に限られたが、利便性や防犯・防寒などの観点から導入が急増。制服を定める校則の性別表現の廃止や、制服を指定アイテムの中から選ぶケースも多くなっている。
生徒の訴えを機に、校則の性別表現撤廃も
自転車通学の多い駿河総合高(静岡市駿河区)では3年前、生徒の「冬にスカートで登校するのは寒い」などの声を機に女子スラックスを導入した。それを機に24年4月までに、性別を前提にした制服や頭髪規定などを定めた校則も改めた。 「生徒にとって一番良いルールとは何かを生徒や地域と一緒に考えました」と森谷幹子校長。各クラスでの議論や学校協議会による地域の声を集約し、男女別の表現をやめつつも「最低限のルールは必要」という方向に収まったという。 各校が公表するホームページや取材から、制服を含む校則の性別表現を廃止した公立高は少なくとも計25校。制服の種類を「Ⅰ、Ⅱ型」(川根、磐田農など)や、「A、Bタイプ」(富士宮西、浜松東など)と表現するケースもあった。スカートやスラックス、ネクタイ、リボンなどを指定のアイテムから選択できる制度を導入する学校もある。
制服「選択制」導入、男子生徒もスカート可能に
駿河総合高も選択制のため、男子生徒もスカートを制服として選ぶことが可能になった。森谷校長は「ルールの幅を広げたことで、生徒が自らの意見を言っても良い環境は整った」と話し、「個性や多様性を尊重し、生徒が安心して学校生活が送れるようにこれからも考えていきたい」と意気込む。 一方、現時点で女子スラックスの導入を予定していない5校中4校は、セーラー服とスカートの組み合わせだった。指定のセーラー服を理由に進学する生徒も多いという県東部の高校は、生徒会で女子スラックスの導入を検討したものの、セーラー服との相性に生徒の反応が芳しくなく見送ったという。教員は「生徒の意見を尊重した結果」としつつ、「生徒の声を聞きながら、今後導入する可能性もある」と含みを持たせた。