恋愛するより趣味に没頭したい! オタクが思い描く“理想の夫婦像”がここにある『オタ婚のススメ!』【書評】
「結婚はしない」個人の人生においてその選択肢は当然あるものの、周囲からの「恋愛・結婚」の圧力は、いまだ根強い。 【漫画】本編を読む
『オタ婚のススメ!』(砂履シンシャ/KADOKAWA)は、そんな圧力から逃れるために偽装結婚したオタク同士の日常を描くラブコメディ。同人活動、カードバトル、コラボカフェへの参戦といったオタクあるある満載の、テンポの良いギャグ展開が魅力だ。 新人漫画家・東雲涼太。親にセッティングされた見合いの場で、相手から断ってもらうために「漫画を描くことしか興味がない! 恋愛に現(うつつ)を抜かしてる場合じゃないんです」と断言。それに対し、見合い相手の小田明美(社会人兼同人作家)は「恋愛してるぐらいなら同人誌描きたいんで!!」と即答。 お互いのやりたいことや方向性が同じであり、利害が一致していると気づいたふたりは、交際0日で入籍。その後すぐに結婚生活が始まる。 同人誌の入稿締切目前で修羅場の明美を、涼太が漫画家のアシスタント経験を活かしてサポートしたり、涼太が集めているバトルカード獲得のために明美も大会に出場したり。相手の好きなジャンルを否定せず尊重しあう姿から、普通の夫婦にはない「オタクならでは」の独特な絆が感じられ、いちオタクである筆者も感動を覚えた。 回を追うごとに、涼太が明美に恋愛的な好意を抱きつつあることは見てとれるが、明美からの涼太に対してのときめきはまだ見えてこない。果たして明美が涼太にときめきを覚え、偽装の夫婦から本当の夫婦になる日はやってくるのだろうか。ふたりのその先が楽しみでならない。 本作は、オタク同士だからこそ成り立つ夫婦の形を描きつつ、「好きなことに全力で向き合う生き方」を肯定してくれる。 周囲から趣味を否定されて落ち込んだり、恋愛や結婚の話題で辟易した時には、きっと本作から「もっと自分の趣味を大事にしていいんだ!」と勇気をもらえるだろう。もしもあなたが進む道に迷っているのなら、好きなことに思いっきり没頭してみてほしい。 文=ネゴト / 花