「巨大地震」で多数の「電車内閉じ込め」が発生するという「目をそむけたくなる現実」
大阪北部地震での対応
大阪府を襲った直近の被害地震は、18年6月18日7時58分に発生した大阪府北部地震。大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市の5市区で最大震度6弱が観測された。この地震は内陸地殻内の直下型地震だが、震源の深さが13kmと浅かったため、マグニチュードは6.1と比較的小さめだが、多様な被害を引き起こした。高槻市立寿永小学校のブロック塀が倒壊し、登校中の小学生が下敷きになって死亡するなど、死者6人、重軽傷者462人の人的被害を出した。また、建物被害は全壊21棟、半壊483棟、一部損壊6万1266棟で、特筆すべきは建物被害の多くが国の支援対象外の一部損壊家屋だったことである。そして、一部損壊家屋の約99%が壁のひび割れや屋根瓦の脱落被害。私も翌日現地に入ったが、倒壊した住宅はなく、壁のひび割れや屋根瓦が脱落して屋根の下地材がむき出しになった家が散見された。 【画像】「南海トラフ巨大地震」で日本が衝撃的な有り様に…そのヤバすぎる被害規模 その時のエレベーター被害について、日本エレベーター協会によると、近畿圏のエレベーター保守台数12万2000台のうち、緊急停止6万6000台、閉じ込め台数339台。閉じ込め者の救出時間は通報を受けて最大5時間20分、平均80分かかっている。地震時管制運転装置が設置されていたにもかかわらず、閉じ込めが起きた原因の多くは、震源が近くそして浅かったため、初期微動(P波)を感知して最寄り階に着床する前に主要動(S波)が到達したためとみられている。 さらに、もう一つの閉じ込めは、朝7時58分という通勤・通学ラッシュ時の地震による列車内閉じ込めだ。これはどこの都市でも起きる可能性がある。大阪北部地震では、東海道・山陽新幹線とJR西日本・JR東海の計26路線、大阪メトロ9路線、関西大手私鉄計33路線、中小私鉄計10路線が、地震直後に緊急停車し運転見合わせとなった。 通常、鉄道事業者は、「概ね震度4以上を観測、または早期地震警戒システムでそれ以上の揺れを予測、基準以上の加速度・galなどを観測した場合、安全確保のために列車を緊急停車させる。停車後、震度4であれば減速して次の駅まで運転し避難。震度5弱以上を観測し、駅間で停車した場合、安全が確認できたら、徐行運転で次駅まで運転し避難。震度6弱以上では、停車した列車は動かさず、乗客を降ろして徒歩で避難させる」などの対応ルールで避難誘導を行うことになっていた。 地震発生と共に、東海道・山陽新幹線11本、JR西日本在来線(東海道線・山陽線88本を含む)153本、阪急35本、近鉄18本、南海電鉄が2本の合計243本の列車が駅間で緊急停車した。ルールでは、安全確認後に列車を動かすことになっていたが、安全確認をすべき点検係員が道路渋滞などですぐに対処できなかった。阪神高速道路などは震度5弱以上を観測すると安全確認のため全線を通行止めとし、一般車両は全て減速運転で各出入り口から一般道に降ろし、安全確認後に通行止めを解除する。地震直後に列車が止まったことで、バスや乗用車利用者が増加、さらに高速道路が閉鎖されたため一般道は通常の約3~7倍と推定される車両が流入し、一部では大渋滞というより全く動かない状態になってしまった。高速道路の通行止めは約5時間後に解除されたが、一般道の渋滞解消までに約14時間を要したという。 各鉄道事業者の点検係員の多くは車の大渋滞に巻き込まれ、指定された点検区間にたどり着くまで長時間かかった。長時間列車内に閉じ込められた人の中には体調不良を訴え、病院に搬送された人もいた。