「巨大地震」で多数の「電車内閉じ込め」が発生するという「目をそむけたくなる現実」
電車の中に閉じ込められて
JR西日本の場合、地震発生時の運行本数は127本。地震発生直後の午前7時58分に全線運転見合わせ、駅間停車列車は35本、乗客は約3万8000人。避難誘導は8時25分頃から開始され、すべての利用客の避難誘導が完了したのが12時45分。つまり、最大で約4時間閉じ込められていたことになる。車内に2時間近く閉じ込められた乗客の一人(35歳女性)にインタビューすると、「満員状態で、電車内は停電で換気やエアコンが動かないため、暑かった。困ったのはトイレでした。3両先の車両にトイレがあるとのことで、人をかき分けながらトイレ車両まで行くと、もう行列で、そこで30分以上待つ間が辛かった。いつ動くのかがわからず情報が少なかった。もし、トイレ車両がなかったら、体調を崩していたと思う」と言っていた。 マグニチュード6.1で震度6弱のそれほど大きくない地震で、鉄道や道路が大混乱し、多数の閉じ込め者が発生した。南海トラフ巨大地震はマグニチュード9.1なので、大阪北部地震の6.1と比較すれば、エネルギーは約2万7000倍ということになる。そして、大阪は震度6弱~震度6強の大揺れになる。最悪の場合、線路は波を打ち、倒木や斜面の土砂災害、脱線転覆、橋梁損壊、電柱倒壊、架橋損壊などの甚大被害が想定される。それが通勤・通学ラッシュ時であれば、なおさら列車内の長期閉じ込めが多数出る可能性がある。 こうした不測の事態(エレベーターや列車閉じ込めなど)に備え、せめてエレベーター内にはトイレや飲料水を収納した「防災BOX」を義務設置にすべきだし、どの列車にもトイレ付車両を連結しておくよう法令改正も必要だ。鉄道会社が運んでいるのはモノではなく人間なのだ。一方で、個人としても、携帯トイレや飲料水を入れた「防災ポーチ」をカバンの中に忍ばせておく自己防衛も必要になる。 さらに関連記事<「南海トラフ巨大地震」は必ず起きる…そのとき「日本中」を襲う「衝撃的な事態」>では、内閣府が出している情報をもとに、広範に及ぶ地震の影響を解説する。
山村 武彦(防災システム研究所 所長・防災・危機管理アドバイザー)