ガンバ宇佐美を覚醒させる名参謀の存在
2015年シーズンのチーム第1号ゴールを決めた宇佐美が、照れくさそうに振り返る。 「自分らしくないゴールといえばそうなんですけど、ああいう形のゴールを増やしていきたいとずっと思ってきた。実際にああいうゴールが生まれたことで、何か手応えをつかめそうかなという気がします。オフ・ザ・ボールでの駆け引きで相手に勝って、今シーズンの課題として掲げてきたワンタッチでのゴールを決めることができたので」 オフ・ザ・ボールの動き――。チーム最多の10ゴールをあげ、大逆転でのリーグ優勝の原動力になった昨シーズンを振り返ったときに、自らに決定的に不足していると痛感させられた要素だった。 ゴールに向かう自身のプレーを分析してみると、大半の場面でボールをもらってからアクションを起こしていた。小学生時代から常に「怪童」として周囲から崇められ、結果として事前に特別な動きや駆け引きをしなくても自然とパスが回ってきた。 骨の髄まで染みついた悪癖が、期待されながらハビエル・アギーレ前監督に率いられる日本代表に招集されない一因となっていたことも理解できた。長所をスポイルすることなく、短所を矯正したい。心の叫びを発していたときに出会ったのが、和田コーチだった。 和田コーチは筑波大学卒業後の2000年から、日本サッカー協会のテクニカルスタッフやアシスタントコーチを歴任。「分析のプロ」として歴代の日本代表監督に重用され、2002年の日韓共催大会を皮切りに、4大会連続でワールドカップのコーチングスタッフに名前を連ねてきた。 昨年いっぱいで日本サッカー協会を離れるときには、複数のJクラブによる争奪戦が繰り広げられてもいる。昨年末にガンバへの入閣が決まったときには「最大の補強に成功した」と他チームからうらやましがられたが、緻密なレッズの分析を介して、今シーズンの初タイトルを獲得にさっそく貢献した形だ。