新定番はエビチリならぬ“エビミソ”。新富町の人気中国料理店がリニューアル
それだけではない。なんと自ら産地にまで足を運んでいるのだ。場所は千葉館山。フカヒレ加工会社「信和キンシ」の天日干しの吉切鮫や毛鹿鮫のヒレを購入している。「フカヒレの戻し方は、本を読んだり、生産者の方に聞いたりとほぼ独学。産地を訪れることで、学ぶことは多かったですね。料理によっての使い分けなども教わりました」
現在は、毛鹿鮫の尾鰭は姿煮に、吉切鮫の腹鰭はスープに用いているそうだ。姿煮は、ワンランク上の「フカヒレ姿煮コース」28,500円の一品としていただけるほか、吉切鮫は上記の通り「季節のおまかせコース」の一皿として登場。シンプルな上湯スープ仕立てだが、それだけにフカヒレとスープの良し悪しが如実にわかる。
味の要の上湯は、金華ハムや豚の腕肉、老鶏、鶏ガラの定番アイテムに牛すね肉を入れるのが湯浅流。「牛のすね肉を入れることでうまみの土台をしっかりさせたいと思ったんです」と湯浅シェフ。これを蒸すこと約6時間余り。素材のうまみがじんわりと滲み出たスープは黄金色。澄んだうまみの中に、なるほどフカヒレを受け止めるだけの力強さも感じられる。味蕾の奥底にじわじわと染み入る味のグラデーションも見事だ。
オープン以来のファンが多いと言う酢豚の後は、いよいよ選べるお食事。麻婆丼、魯肉飯、九条ネギの汁そば、自家製ビーフジャーキーの4種類からお好きなものをどうぞ。という趣向だ。今回選んだのは、湯浅シェフお気に入り「京葱SAMURAI」の九条ネギを使った汁そば。聞けば、九条ネギに特化したグループ生産者が、土作りから徹底し、一本一本丁寧に手作業で収穫したネギだそうで「ネギの甘みと苦みのバランスが良く、香りのあるところが気に入っています」とのこと。
スープは、鶏胸肉と腿肉のミンチでとった清湯がベースの醤油味。ここに九条ネギをたっぷりのせるだけだが、それで充分。余計なものは何もいらない。香味油の香りやネギの甘みがさりげなくうまみに抑揚をつけている。ちなみに、自家製ビーフジャーキーは麺飯ではなく、いわばつまみ。「中には、お酒をまだ飲みたいという方もいらっしゃるので」という湯浅シェフの気配りだ。