日本人が望んだ長寿社会―人口減少時代に幸せな人生送る社会を確立できるか
「緩和」と「対応」の姿勢
日本の総人口は減少を始めています。これは単なる量的な減少ではなく、様々な質の変化、地域的差異を伴って進行しているものです。そして、それは最近になって突然発生したものではなく、過去の人口動態、家族形成等の積み重ねとして生じています。既に東京圏出身者の割合は同一世代の4分の1を超えていますし、地方圏では地域の人口再生産ができなくなるほどの人口流出が長きにわたって続いています。 女性の社会進出や大学進学は多くなっていますし、男女ともに家族形成を遅らせる傾向は顕著です。皆が望んだ長寿化の帰結として高齢化は進み、多死社会の到来は避けられません。その中で特定世代の死亡によって地域社会も大きく変容していきます。繰り返しになりますが、人口減少とは単なる人口の量的減少ではありません。 これから先、人口減少時代を生きていく私たちに必要なのは「緩和」と「対応」の姿勢であると思います。人口を増加させたり、昔のような地域の姿を取り戻したりすることはもはやできません。そのような考えのもとで進められるものは必ず失敗するでしょう。ですが、未婚化や地方圏からの若年層の流出等、現在進行中の変化を緩和させる努力は必要です。 それは結婚支援やUターン就職支援等の形で進められていますし、その効果を高めるような工夫をしていかなくてはなりません。しかしながら「緩和」だけで問題は解決しません。これまでと異なる状況へ「対応」しなければならないのです。現在の状況、そして将来に起きる変化を客観的に把握し、それを前提として地域社会が上手く回っていく仕組みづくり、地域住民の生活満足度が高まるような取り組みが必要です。 その答えは一朝一夕に手に入るものではありませんし、地域によっても異なっているだろうと思います。まだ雲をつかむような話かもしれませんが、事態は一刻を争います。この危機的な状況の中で、明確な「対応」のできる地域が生き残ってくという社会になっていくでしょう。本当の意味での地域間競争が起こってくるだろうと思います。 ---------- 丸山洋平 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学、博士(学術) 新宿自治創造研究所非常勤研究員、慶應義塾大学特任助教などを経て、2015年4月より福井県立大学地域経済研究所特命講師 主著に「戦後日本の人口移動と家族変動」(文眞堂) 専門は地域人口学、人文地理学、家族社会学