日本人が望んだ長寿社会―人口減少時代に幸せな人生送る社会を確立できるか
長寿化による高齢者数の増加
高齢化社会というと高齢化率に着目しがちですが、高齢者の実数の変化を把握することも重要です。平均寿命が延びるということは、死亡のタイミングを遅らせていることでもあります。そうした変化の結果として高齢者の総数も増えていくことになります。 日本全体の高齢者数の見通しについて、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計の結果を見てみましょう。図2にその推計結果と国勢調査による高齢者数の実数を示しています。この将来人口推計は国勢調査が実施されるたびに更新されていますので、推計の基準人口として利用した国勢調査の実施年で表現しています。 これを見ると、推計が新しくなるほど高齢者数が増加してきているのがわかります。いずれの推計でも2041~43年に高齢者数がピークを迎えていますが、そのピーク人口は大きく異なっており、1995年推計と2015年推計とでは約550万人もの違いが生じています。 また、1995年推計では2020年から2030年頃まで減少し、その後再び増加するという変化があり、2020年と2040年の高齢者数は概ね同数でした。それが2000年推計以降は、2020年から2030年にかけて減少せず、2040年に向けてさらに増加するという変化を見せるようになりました。 日本全体での人口移動とは国際移動であり、65歳以上ではほとんど発生しません。ですので、この高齢者人口の推計結果の変化は寿命の伸長によるものです。推計をする際、将来の生残率(死亡率)を設定します。それは過去の変化をもとにして、将来の高齢期の死亡率が改善されるように設定しているのですが、これらの推計結果の違いは、そうした改善の予想を超えて寿命が延びてきたことを意味しています。 最新の2015年推計では、4000万人弱にまで高齢者数は増加すると見通されています。これは1980年の高齢者数の4倍近くです。今後50年くらいを考える場合、高齢者となるのは既に生まれている人々ですから、高齢者が大量に国外に流出するとか、寿命が短くなるといった蓋然性の低いことが起きない限り、この数が大幅に変わるということはありません。 高齢者が4000万人いるという状況は一時的でしょうが、3000万人以上いるという状況は中長期的に継続します。日本人が望んだ長寿社会、その社会の中で幸せな人生を送ることができるかどうかは、量的に増大する高齢者を支える仕組みを確立できるかにかかっています。