日本人が望んだ長寿社会―人口減少時代に幸せな人生送る社会を確立できるか
高齢者数の増加による死亡数の増加
高齢期の死亡率が改善され、長生きできるようになったことで高齢者数がより多くなるという将来見通しへと変化していきました。しかし、死亡率が高いのはやはり高齢期であり、高齢者数が増える分、死亡数も間違いなく増加していくことになります。 図3は国立社会保障・人口問題研究所の将来推計も含め、1900年以降の日本の出生数と死亡数を示したものです。自然増加数も示しており、これが概ね日本の総人口の変化となります。2015年の死亡数は129万人でした。これから先、日本の死亡数は毎年過去最大を更新しながら2040年頃に150万人程度まで増加し、その水準が中長期的に維持されるようになってくる見通しです。 将来の出生数は減少すると推計されていますが、若者が結婚するようになり、出生率が高くなれば増加する可能性は少ないながらもあります。ですが、死亡数が減少するということはありません。なぜなら今後死亡する人とは、既に生まれている人であり、その数は決まっているからです。 寿命が伸びることによって死亡のタイミングが遅れることはあり得ますが、結果的に死亡する人数は変わりません。図3で示されているような死亡数が将来、確実に発生してきます。長寿化が進んだ結果、今後発生する死亡数は増加することになりました。まさに多死社会の到来です。 出生数が増加する可能性はあると書きましたが、劇的な増加を期待するのは難しいでしょう。この推計結果から大きく逸脱するということはないと考えるべきです。したがって、2040年以降は毎年100万人くらいの人口の自然減少が生じることになります。2015年国勢調査では、秋田県の総人口は102万人、和歌山県の総人口は96万人でした。毎年、県が1つなくなってしまうような人口減少が起きる時代が、もう目前にまで迫っています。
1930・40年代生まれの死亡はいつがピークか
多死社会には何が起きるでしょうか。死亡数が増えるということから連想すると、まず墓地不足になると思います。それから火葬場のキャパシティも不足するでしょう。夏場には大きな問題になるはずです。終末期の患者が増えることによって、病院の人手不足も深刻化するかもしれません(そうならないように在宅医療を進めてはいますが)。他にも様々な影響が表れてくると考えられます。 多死社会には何が起きるのか。今回はこの問題を世帯別の死亡数から考えてみましょう。注目するのは1930・40年代生まれの世代です。この世代は人口転換における多産少死世代であり、きょうだい数が多いという特徴があります。きょうだい数が多い分、親と同居できず、離家しなければならない者が多かった世代であり、そうした人々の多くが1950・60年代の地方圏から大都市圏への人口移動の中心となりました。 そして彼ら・彼女らは大都市圏郊外に整備されたニュータウンに住み、小規模核家族世帯を大量に形成しました。後継ぎにならない者全員が大都市圏へ移動したわけではありませんので、地方圏でもこうした小規模核家族世帯は形成されていたはずです。この世代の居住のために、日本全体で大量の住宅が供給されることになりました。その多くが持ち家です。「住宅すごろく」という言葉があったように、日本人は欧米に比べると居住地の流動性が低く、夢のマイホームを手に入れると、それを終の棲家とする傾向が強く見られます。そのため、1930・40年代が居住してきた持ち家住宅のほとんどは空き家になることはなく、これまで住宅市場に出てきませんでした。