王道なのに新鮮だった『涙の女王』、ジャンルを横断する傑作も 2024年韓国ドラマ座談会
“イ・イギョン劇場”や“カン・フン劇場”が誕生
咲田真菜(以下、咲田):2024年はまず『私の夫と結婚して』にどハマりしてしまいました。 今年はファンタジー要素のあるお話が少なくなかったように思っていて、「これはいわゆるタイムスリップものと同じ感じなのかな?」と観始めたんですが、とにかく主人公ジウンを守るユ部長役のナ・イヌさんが好き過ぎて、本当にウットリさせられました! もちろんジウンを演じたパク・ミニョンさんはもともと好きでしたし、あんなに役作りで激やせしてどういう演技を見せてくれるんだろうと楽しみにしていたら期待通りの素晴らしさでした。そして、ジウンの夫で“クズ男”を演じたイ・イギョンさん(笑)。当選した宝くじが北朝鮮に飛んで行っちゃう映画『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』をたまたま観てたんで、その北朝鮮兵士役とのギャップがもうすごかった。本当にクズ男なんですが(一同笑・うなずく)、すごくいいなって思いました。 にこ:『私の夫と結婚して』は、“イ・イギョン劇場”でしたね。 咲田:本当にムカつかせるのが上手いんですよね(笑)。 にこ:『ウラチャチャ My Love』でも、イ・イギョンさんがめちゃくちゃコミカルな演技をしまくってるんです。そのことで本国では面白いキャラで定着したところがあったんですが、そんな彼がああいうクズ男を演じているというギャップですよね。すごく最低で、でも最低過ぎてもうギャグになっている感じでした。 咲田:まさにそのギャップにやられました。『宝くじの不時着』は作品自体がすごくコミカルだったので、イ・イギョンさんはドラマのような感じではなかったんです。だから「何なんだこの人は!?」って思いました。あと今年はU-NEXT作品を結構観てまして、その中からだと『卒業』ですね。 にこ:ウィ・ハジュンさんのドラマですね! 咲田:どうしても『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』をイメージさせるところや、“このシーン、同じ景色では?”って思うところも確かにあったりはするんですが、それを差し引いても、年下の自分の教え子と恋愛関係になっていく展開を静かに描いてくれていてしっとりしてていいなと思いました。教師役のチョン・リョウォンさんは特別すごく美人というわけではないんですがどこか魅力がある方でしたしね。そしてやっぱり『ソンジェ背負って走れ』は外せない。あそこまでの情熱で推しを推せるというシチュエーションと、実はその推しが自分のことを好きだったなんていうのは憧れですよね。そこでもうグッと心を掴まれて一気に観てしまったというところです。もう一つは、主役のシン・ヘソンさんが目当てで観た『私のヘリへ ~惹かれゆく愛の扉~』。観始めると、カン・フンさんがものすごく良くて……! すごく切ない感じで、カン・フンさんのセリフでボロボロ泣けてしまったので、私の中では“カン・フン劇場”でした。それからリメイク作『捜査班長 1958』も、元々のオリジナルを私は知らないにもかかわらず結構グッとくるシーンもあったりして、最終回は震えました。また、今現在観ている作品なのでランク外ですが『ジョンニョン:スター誕生』。いち舞台ファンとしても、キム・テリさんの才能の爆発を感じます。 にこ:去年の座談会で、「『力の強い女 カン・ナムスン』の悪役がすごく良かったから、来年はピョン・ウソクの人気が出るんじゃないか?」とか、「『無人島のディーバ』のチェ・ジョンヒョプが来る」なんて予想していたら、2人とも本当に大ブレイクしましたよね! ピョン・ウソクってものすごくカッコいいのに、彼にグッとハマる作品がこれまであまりなかったんじゃないでしょうか。それが『ソンジェ背負って走れ』で魅力が爆発した感じです。歌がものすごく上手で、劇中バンドのECLIPSEがK-POPのヒットチャートに上がるほどシンドロームが起きていました。2番手キャラのソン・ゴニさんも人気が出ましたし、キム・ウォネさん扮するソンジェのお父さんとのエピソードも良かった。咲田さんがおっしゃっていたように、推しと恋愛できるっていうのはもう全オタクの憧れですよね(一同笑)。あと私が好きだったのは、最初は半身不随だった主人公ソルがその後タイムスリップをしていく展開ですね。通常タイムスリップものって過去はあまり変えられないセオリーだったんですが、この作品は変えていってくれるじゃないですか。嬉しい方向にストーリーが運んでいくんですよね。じっくり語るというよりは、キャーキャー楽しめる作品が来たというところでした。 咲田:『私の夫と結婚して』も同じです。未来を良い方向に変えていくじゃないですか。ついてないことばかりだったパク・ミニョンの人生を、ピンチはたくさんある中でもナ・イヌと一緒に変えていくのがとても良かったです。エンディングもすごく良かったので、気分良く見れました。 にこ:その通りだと思います! 咲田:タイトルも出だしも、年の始めから何となく悪い話なのかな……なんて思ってもいたんですけども(笑)。スカッとしました! にこ:韓国ドラマの主人公が不遇で酷くいじめられていて、「うう~(怒)」って思いながらスカッとさせられるのが良いですよね。ところでお2人は、『白雪姫には死を~BLACK OUT』はご覧になってますか? 咲田:観てないんですよ……。 荒井:1話で止まってしまってます(苦笑)。 にこ:じゃあネタバレを避けながら(笑)。『怪物』を彷彿とさせるヴィレッジミステリーなんです。地域のコミュニティで少女の殺人事件が起きて、犯人とされた同級生が10年間投獄されますが、主人公は酔っていてそこから記憶がないんですよね。 自分が本当に殺したのか分からないと。前半はそうやって進むんですが、後半からあの人も怪しい、この人も怪しい……みたいにみんな怪しく見えてきて、ヴィレッジミステリーの面白さにエンジンがかかるんです。アガサ・クリスティーの『オリエント急行殺人事件』のようで全然違う観点が浮かび上がってくるんですよ。ドイツの小説が原作になっているんですが、「タイトルは何を表してるのか?」「白雪姫とは誰なのか?」とか考えるのもすごく面白いんですよね。主人公の殺人の疑惑をかけられるピョン・ヨハンさんが今回見事な演技を見せています。記憶がないことで困惑しながらも控訴せず懲役へ行くんですが、実は少女の遺体が見つかっていないんです。殺された少女の家族からは「遺体を返してくれ」と言われるので本人も必死で思い出したいけれど思い出せない。そんなところに少女が亡霊として現れて「私を見つけて」って言ってくるんですよね。ぜひ年末年始の一気観をおすすめします。私は朝6時まで観てしまいました!