リーゼントボクサーのV5をあの消えたお笑いタレントが応援!?
プロボクシングの東洋太平洋Sバンタム級戦が27日、後楽園で行われ、王者の和氣慎吾(27歳、古口)が同級10位のジミー・パイパ(21歳、フィリピン)を1ラウンド2分59秒、左アッパーから右フックの衝撃KOで倒して5度目の防衛戦に成功した。 これで6連続KO勝利。3度も世界挑戦のチャンスを無くして引退危機にも陥っていた“日本一不幸なリーゼントボクサー”は、最高の形で再起を飾った。陣営では6月上旬を目標に世界挑戦プランを練っていて、そのターゲットの一人には、大晦日にショッキングなTKO勝利を演じたWBA、WBO世界同級統一王者のギジェルモ・リゴンドー(キューバ)も含まれている。
一瞬、パンチが消えた。 右構え、左構えと頻繁にスイッチしてくるフィリピン人がパンチをふりまわそうと和氣の距離に入ってきた瞬間、カウンターの左アッパーが炸裂。間髪いれず右フックのコンビネーションをあわせると、パイパは、ぐらぐらっと膝から揺れてキャンパスに倒れた。 試合後の控え室で、和氣自身がハンディカメラの映像を見直さなければわからないほどの秒殺パンチ。「オーソドックスに構えなおして入ってくるところに合わせたパンチ。倒そうと思って出したパンチじゃないが、一瞬、自分でもわからないくらいに反応した。手ごたえがあった。古口会長のミット打ちでずっと繰り返してきたパンチだったけど」。 序盤は、怖いもの知らずのパイパの右フックをもらう危ないシーンもあったが、「それも想定内。パンチもらいましたか?ちょっと危ないようにみせるドラマを作ったんですよ」と、リーゼントボクサーらしく口を尖らせた。 リングサイドには、もう一人のしんごちゃんがいた。最近は、すっかりテレビから消えてしまったお笑いタレントの楽しんごさんだ。興奮気味の楽しんごさんは、プライベートでも和氣と親交がある仲で「目がものを言うボクサー。大好き。愛しています。腹筋も凄いし、体のどこを触っても怒らないから好き。ほんと強――い」と、黄色い声で“ラブ”を注入していた。楽しんごさんの声援と、場内に長渕が流れる中、和氣は、花道をもむくちゃにされながら控え室に戻った。 「一度はもうボクシングができないと思った。心細かった。それだけにこの試合で結果を出さなくちゃ次はないと思っていたしプレッシャーがあった」 しみじみと語るのは、昨年秋から続いた一連の引退騒動についてである。 世界最強と呼ばれる統一王者、リゴンドー戦の挑戦者に一度は、指名されたが、“大人の事情”に巻き込まれ、そこに自らの意思の弱さや甘さも出て、一世一代の大チャンスを自ら放棄した。代役となった天笠尚が、その大晦日のリングでリゴンドーから2度ダウンを奪い、あわやの名勝負を演じて男を挙げたが、和氣には汚名だけで残って引退危機に追い込まれた。 だが、周囲の関係者の努力と和氣の謝罪で、なんとか再起への道が生まれ、次にWBC世界Sバンタム級王者のビッグネーム、レオ・サンタクルス(メキシコ)へのアメリカでの挑戦話が浮上した。時間はない中、和氣は急いで準備に入ったが、「サウスポーとはやりたくない」と王者側に嫌われ、世界戦は再び幻と消え、和氣の心は傷ついた。 「落ち込みましたよ。でもそれも数日だけ。前向きの気持ちを失いたくなかった。今やることは、必ず、その先につながるはずだから」