トランプ2.0外交:世界が戦々恐々となる理由
国際秩序へのリスク
問題は、国際社会のモラルに与える影響とリスクだ。ウクライナが人命や領土の損失を省みずに停戦を強いられれば、「武力による現状変更を許さない」という第二次大戦後の世界の基本ルールが踏みにじられ、日本などが掲げてきた「法の支配に基づく秩序」が崩壊するリスクをはらんでいるのは言うまでもない。台湾について「武力統一も辞さない」とする中国がこれを先例とみなし、武力による威嚇を一層高める恐れもある。 岸田文雄前首相は「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との危機感を訴えて、日米欧によるウクライナ支援の先頭に立ってきた。トランプ次期政権がウクライナに「大義なき和平」を押し付けると、日欧諸国ははしごを外される形となり、先進国首脳会議(G7サミット)や北大西洋条約機構(NATO)の結束はもとより、日米同盟の連携にも支障をきたす恐れがある。
ロ朝同盟にどう対応?
ロシアと北朝鮮の軍事同盟にどう対応するかも問題だ。両国は6月に締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」の下で、北朝鮮部隊のロシア派兵や北朝鮮の核・ミサイル技術支援などを進めている。 トランプ氏は1期目の経験からプーチン氏や北朝鮮の金正恩総書記との個人的関係に自信を深めているとされるが、欧州・東アジア情勢は戦争も派兵もなかった当時とは様相が一変した。両国の行動は欧州と東アジア双方の安全を同時に脅かしているのが現状だ。ロシア、北朝鮮を抱き込もうとしても成功する保証はなく、逆に付け込まれる心配もある。 台湾に関しても不明な点が残る。トランプ氏は台湾有事の際に「中国からの輸入品に120~150%の関税を課す」と、懲罰的関税で対応する姿勢を示しているが、米国や同盟国の介入については言葉を濁している。日韓などの同盟・パートナー諸国はどう対応すべきかを巡り、悩ましい状況が続くだろう。トランプ氏が独断で突き進む展開に備えて、日欧などの側でも今から周到な協議と連携を絶やさないことが必要だ。