「女は大学に入っても金がかかるだけでダメだ」毒母から自分と同じ看護師になるよう言われた娘、意外な進路へ
夫の優しさを素直に受け取れない毒母育ちの娘
――そんな金山さんですが、家事も育児も積極的にしてくれる優しい男性と結婚しましたよね? 旦木:はい。しかし母親から暗に『あんただけ幸せになることは許さない』という圧を受け、『幸せになってはいけない』と常に不安に苛(さいな)まされていました。幼い息子さんが入院したときには、育休をとってくれるという夫の優しさを素直に受け止められず、夫に当たり散らしてしまいました。 ――家族から優しくされたことがないので、どう受け取ってよいか分からなかったんですね。毒母経験は、金山さんとお子さんとの関係に、どのような影響を及ぼしたのでしょうか? 旦木:子どもが生まれてからの金山さんは、子どもの泣き声やわがまま、抱きつきなどに対し、ずっと拒否反応を起こしていたそうです。母親からいつも怒鳴られて育ったので、自分の子どもたちを冷静に叱れないことが多く、子どもたちとの関わり方に悩むようになりました。そして、「なんで私はこんなに上手くできないんだろう?」と自分を責めるように……。 ――金山さんはどのように子育ての葛藤を乗り越えて行ったのでしょう? 旦木:子どもたちを叱らなければいけない場面では、夫に叱るのを交代してもらったり、夫に子どもたちを甘やかしてもらったりと、夫と協力して、自分が母親から受けてきた毒母を連鎖させないように努力しています。 自分の母親が毒母だったと気付いてからは、母親と距離を置き、夫だけでなく公的な子育て相談などを利用しながら子どもたちに向き合っています。
「母親はこうあるべし」はどこから来る?
――なるほど。解毒には毒母と物理的な距離を置くことも有効なのですね。 旦木:はい。自分が毒親にならない対策として、子どもと自分との関係ばかりに目が行きがちですが、まずは自分自身と親との関係に向き合い、毒親であったならば距離を置き、共依存関係を断ち切ることが大切です。 ――先ほどおっしゃっていた、毒母の特徴である「母親はこうあるべし」という思い込みは、どこから来るのでしょうか? 旦木:様々なところから来ていると思います。社会から押し付けられるジェンダーロールや生まれ育った環境、自分の親から「母親とはこうあるべき」「女性はこうあるべき」と言い聞かされるなど。また、「自分は社会からこう見られたい」という自分の内側から来るケースもあると思います。 【旦木瑞穂(たんぎみずほ)】愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する記事の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。 <文/此花わか> 【此花わか】 ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):@sakuya_kono
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