「コロナで頭がアホになった」のツイートが話題。コロナ後遺症“ブレインフォグ”の恐ろしすぎる実態「集中力が続かない」「家事の途中で何をしていたか忘れる」対策と最近注目の治療法とは…
治療の中心は薬物療法、新たな可能性としてTMS療法が注目
それでは治療法はあるのだろうか。国際医療福祉大学三田病院の野田賀大氏はこう話す。 「ブレインフォグの治療法は現在確立されておらず、基本的に対症療法となります。不眠や疲労感の強い患者さんの場合には、それに対する薬物療法を行います。うつ病の症状がある場合には抗うつ剤を使用します。 その上で、うつ症状の改善が見られない場合には経頭蓋磁気刺激(TMS)という治療法を紹介することもあります。TMS療法は、身体を傷つけることなく電気刺激を脳の特定部位に送ることで、脳の神経細胞を刺激し、その働きを活性化させる方法です」 この治療法は、もともとうつ病の治療に使われていたもので、うつ病に対して保険適用があります。当院でもうつ病治療でTMS療法を行うなかで、コロナ後遺症にもメリットがあるのではないかという知見が積み上がってきました。 そこで当院では現在、厚生労働省の臨床研究審査委員会(CRB)の認定を受けた特定臨床研究(※1)として、コロナ後遺症に対するTMS療法の治験を行っています。 2022年には、イギリスの論文からコロナ後遺症によりダメージを受けやすい脳の部位がわかってきました。その知見をもとに、脳の特定部位に対してTMS療法を用いた治療計画を進めています。現在までに既に35例がエントリーしており、ひきつづき治験参加者を募集している段階です」 研究は進んでいるものの、残念ながら、今はまだ確立された特別な治療法はない。 奇をてらった方法や名医探しをするのではなく、信頼できる医師と共に科学的根拠に基づいた治療に取り組む必要がある。 しインターネットなどで気になる情報を見つけても、自己判断で取り入れず、まず近くの病院で相談することが大切だ。 また、ブレインフォグは脳の炎症が一因とみられることから、重症化を予防するワクチン接種が効果的である。 前回のワクチン接種から時間が経っている人は、効果が減衰している可能性があるので、追加接種を検討したい。 ※1 (認定番号:CRB3180027,臨床研究実施計画番号:jRCTs032230291 https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs032230291) 医師プロフィール 大澤 亮太(おおさわ・りょうた) 医療法人社団こころみ理事長、(株)こころみらい代表産業医。 山梨大学医学部卒業。国際医療福祉大学にて研修終了後、産業医を意識して精神科医療に進む。精神科単科病院やクリニックにて経験を積み、産業医として20社以上の嘱託産業医を務めた。精神保健指定医、日本医師会認定産業医、健康スポーツ医。 2017年4月に元住吉こころみクリニック開院。2020年2月、医療法人社団こころみ理事長に就任。2024年8月現在、rTMS療法専門医療機関である東京横浜TMSクリニックをはじめ、東京・神奈川に8クリニックを運営。医療法人社団こころみ臨床研究審査委員会を設立し、クリニックにて臨床研究を実践。 野田 賀大(のだ・よしひろ) 国際医療福祉大学三田病院精神科准教授/慶應義塾大学医学精神・神経科学教室特任准教授、東京横浜TMSクリニックTMS学術・技術顧問。 東京大学大学院医学系研究科修了。東京大学医学部附属病院精神神経科や神奈川県立精神医療センター等の勤務を経て、トロント大学精神科Centre for Addiction and Mental Healthにてクリニカル・リサーチフェローとして5年間ニューロモデュレーション研究に従事。帰国後、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室特任講師を経て、現職。専門はTMSニューロモデュレーションと神経生理学。 東京横浜TMSクリニック開院時よりTMS治療に関する学術・技術顧問を務める。「オールジャパンTMSデータベースレジストリプロジェクト(TReC-J)」実務責任者。 著書に『うつ病に対するTMS療法Up-to-date 自分らしい生き方を求めて』がある。 日本うつ病学会 ニューロモデュレーション委員会委員、日本臨床神経生理学会 神経精神疾患のバイオマーカー検討委員会委員、The International Federation of Clinical Neurophysiology Editorial Board of Clinical Neurophysiology
集英社オンライン編集部ニュース班
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