人の手で育てたライチョウ 中央アルプスに引っ越し 動物園などで育てられた生後2カ月のひな 移送中にアクシデントも…【長野】
国の特別天然記念物ライチョウを担いで運びました。本来の生息環境での繁殖を目指して、動物園や博物館で育てられた生後2カ月のひなが、中央アルプスに「引っ越し」をしました。 ダンボール箱の中に、動物園生まれのライチョウがいます。 ■山岡秀喜アナウンサー 「午後3時40分です、箱にはいった状態で、背負われて、木曽駒ケ岳、頂上山荘に到着しました!」 山に設置されたケージの中で、ひなを取り出します。 「あ元気だ!良かったです!」 「2羽とも元気です」 標高3000m近い高山帯での生活が始まりました。絶滅危惧種のライチョウは、現地での保護活動とともに、動物園で繁殖技術を確立するための取り組みが進められています。 ■事業を指揮 信州大学・中村浩志 名誉教授 「動物園でのライチョウ飼育の長年の夢が、ほぼここで実現できそうです!」 今年は県内外の4つの動物園・博物館で繁殖に取り組みました。ライチョウが山で生きていくには、高山植物を消化するための腸内細菌を獲得したり、寄生虫への耐性を身に付ける必要があり、その手法を模索してきました。 これらの検査をクリアしたひな10羽が、大町市の大町山岳博物館と栃木県の那須どうぶつ王国から搬送されました。 17日午前、施設を出たライチョウは、昼すぎに中央アルプスのふもとのバスターミナルに到着。 しかし、ここで、アクシデントが…。 ■環境省・小林篤さん 「残念ながら、大町の8個体のうち3個体が死んでしまっているのが確認されました」 車での移送中に3羽が死んでしまいました。冷房は入れていたものの、車内の気温が高くなってしまったことが原因とみられます。 ■事業を指揮 信州大学・中村浩志 名誉教授 「ライチョウのひなにとって段ボールに入れられて、車・ロープウェー、それから担いで運ばれるというのはきわめてストレスがかかる、その上に温度のストレスがかかってしまった」 生き残った7羽は、ロープウェイに乗車。千畳敷駅から環境省の職員に、背負われて、山に運ばれました。 中央アルプスではおととし、動物園で育てた「親子」を3家族19羽を野生復帰させましたが、人工ふ化させたひなだけを移送するのは初めてです。 ■事業を指揮 信州大学・中村浩志 名誉教授 「今年の冬を越して、そして自分で繁殖できるか…これはですね、やってみないと分からないですね。まったく母親から育てられた経験がないわけです。翌年繁殖するまで持っていければ、野生復帰事業は本当の意味で完成します」 人の手で育てたライチョウたちは高山で生き残れるかー。ケージの中で5日間ほど環境に慣れさせたあと、放すことにしています。