給食用の白衣に他の家庭の柔軟剤の残り香が…小学生の母、「香害」に悩む日常 「世の中が毒だらけに感じる」
小学5年生と1年生の姉弟がいる福井県嶺北在住の40代女性は、子どもたちが学校から給食用の白衣を持ち帰るたび憂うつだった。長女が入学して間もなく、他の家庭で使われている柔軟剤の臭いで気分が悪くなり、頭が痛くなった。自宅で使っている植物由来の洗剤で洗濯しても染み付いた臭いは消えず、息を止めてアイロンをかけた。 長男も今年入学し、苦痛は2倍に。悩んでいたある日、別の学校のママ友が白衣を持参させていることを知り、意を決して学校側に相談すると、すぐ持参を承諾された。ネットで白衣を購入し、10月からようやく“普通に”アイロンがけができるようになった。「今は精神的にとても楽。もっと早く(持参を)思いつけば良かった」。学校側の素早い対応に感謝している。 ■ ■ ■ 子どもたちは2人とも白衣を「臭い」と感じるが、「頭は痛くならない」という。長女の同級生は「別に(臭くない)」という反応だったと聞いた。柔軟剤などを使わないようにしているママ友は、娘が中学に進学すると「うちだけなんで香りがないの? みんながしているのがいい」と言われて困ったらしい。 子どもがスポーツ少年団から帰ると、チームメートのユニホームからの移り香が気になった。観戦した屋内スポーツ会場は臭いが充満し、頭痛が起きた。量販店でも洗剤売り場は避け、宅配業者にはしばらく息を止めて対応している。 「世の中が毒だらけのように感じる」。香害は日常の至る所にあり、「自分の症状がひどくなったり、子どもたちが発症したりしないか心配」と吐露する。 兵庫県宝塚市教委は昨年8月、市立小中の児童生徒の18%、約3千人が回答したアンケート結果に基づき、「香害および化学物質過敏症への配慮のお願い」を保護者に通知し、ホームページでも公開した。 アンケートで、「人工的な香料(化学物質)を不快に感じたことがあるか」の問いに児童生徒の27・8%が「ある」と回答し、「体調不良を起こしたことがある」という児童生徒も7・8%いた。 同市教委は「授業中など子どもたちは香害から避難することができない」「自分の服の柔軟剤の臭いがほかの子どもの健康に影響をおよぼすおそれがあることを十分に理解できていない」と問題提起し、「大人が化学物質過敏症の発症リスクを理解し、香料を控えるなど配慮をすることで香害から子どもを守ることができる」とした。 保護者に対し、▽白衣や体操着の洗濯には柔軟剤の使用を控える▽各家庭で用意した白衣、三角巾の使用を可能とする▽行事で来校する際、柔軟剤や香水、整髪料の使用を控える―ことを要請した。 白衣を持参させている嶺北在住の女性は「(化学物質は)環境にも人体にも悪い可能性があるから規制が必要」と思う。「分煙が進むたばこと比べ、香害は軽く見られている気がする。香りがつらいという人がいることを分かってもらいたい」