総長のビュイックで練習し、運転免許を取得!?|長山先生の「危険予知」よもやま話 第30回
マン島まで行き、レースにまったく興味がない自分に気づく
編集部:マン島TTレースですか!? イギリスのマン島で行われる公道レースですよね。サーキットとは違って、カーブではみ出したり転倒したときにライダーを守るエスケープゾーンがない公道を、とんでもない速度で走るスリリングなレースですね。 長山先生:そうです。よくご存知ですね。私も初めて聞いたときは興味津々で簡単にOKを出しましたが、結果は地獄の味わいでした。 編集部:えっ、地獄ですか? 私なんかテレビで見て以来、一度自分の目で見てみたいと思っているので、視察させてくれたら飛び上がるほど嬉しいですけど。 長山先生:好きな人ならそうなのかもしれませんが、日本から遠く、まず移動するのがたいへんでした。航空機で大阪から東京、東京からフィンランドのヘルシンキ、ヘルシンキからロンドン、ロンドンからリバプールまで長時間移動するのですが、その間ほとんど眠れぬままに過ごしました。リバプールからマン島は夕刻のフェリーでしたが、乗客たちはさまざまな種類の二輪車を持ち込んだ世界中から来たライダーでたいへん混雑しており、椅子には座れず、新聞を床に敷いて横になって一晩過ごしたのですが、体が痛くて一睡もできませんでした。 編集部:それは疲れますね。視察と聞くと、先方がいろいろと手配してくれて快適に移動できそうですが、そうではなかったのですね。 長山先生:そうなんです。飛行機はともかく、マン島へのフェリーは便数が少なく、レースのときに人が集中してしまうので仕方ないのかと思いますが、疲れましたね。明け方にマン島に着き、土手のような場所で観覧することにしてレースがスタートするのを待ちましたが、パンフレットもなく、出場選手などの情報がまったくなかったのも敗因でした。次々に走ってくるマシンは猛烈なスピードであっという間に目の前を通り過ぎていくだけで、誰が誰やら、どの国のマシンなのかさっぱりわからず、まったく面白くもないままにレースは終わってしまったのです。私にとって二輪車に関する興味は、暴走族の心理的な背景や事故発生の人的側面からの分析などで、レースにはまったく関心がないことがわかりました。 編集部:たしかにレースや速い車両に興味がないと、面白さを感じることはできないでしょうね。でも、サーキットでの話などを聞いていると、長山先生は人が走っているのを見るより、ご自分で走ることのほうが好きそうですね。 長山先生: そうかもしれません。サーキット以外でも、疲労を計測する実験をした際に、自動車メーカーのテストコースを走りましたが、それも貴重な経験で楽しいものでした。 編集部:疲労を計測するため、テストコースを走ったのですか?