「米農家さんは本当に減ってるんだな」靴下専門店が奈良での事業拡大で感じた“複雑な気持ち”…15年間で水田が減って増えたのは?
「米農家さんは本当に減ってるんだな……というのがわかるのは、弊社の綿花畑が大きくなって行ってるから」。そうXに投稿したのは農家ではなく、靴下専門店「Tabio 靴下屋」の公式アカウント。農業を取り巻く現状について投稿した背景について同社と広陵町に取材しました。 【写真】水田が減り、育てているのは…? そのように実感した理由は、「弊社の綿花畑は奈良県の休耕田を活用している。農地は放置するとすぐにダメになる。だから綿花を作ろうという活動。で、その農地候補が増えるという事はそういう事。そこは複雑な気持ちです」と語っています。 本来であれば事業拡大は喜ばしいことですが、以前からあった“田んぼ”が少なくなっていて、ジレンマを感じているのでしょう。実際、農林水産省の統計では全国的に主食用米の作付け面積が減っていること、奈良県による統計も水稲作付面積が減少傾向であるとしています。 同店を運営するタビオ株式会社(以下、タビオ)に、綿花栽培を開始した背景、農業に携わることでの気づきなどをタビオの広報担当者にたずねました。
田んぼ約4枚分から国内最大級の規模に
創業者である越智直正さん(2022年没)の長年の夢として、「世界最高の靴下をつくるため、メイドインジャパンにこだわり、原糸(綿花)も国内で最高品種を栽培したい」の思いをもとに2009年から靴下の生産量日本一の奈良県北葛城郡広陵町で綿花栽培を開始したタビオ。 「その際に、広陵町からシルバー人材センターの活用についての協力を求められました。ちょうど休耕田が増えているという話も耳にしていましたので、それなら休耕田を使って綿花栽培をしたいと要望し、始めることとなりました。みなさまの反応を拝見していると、生まれ育った土地での『やりがい作り』へも寄与できていると感じています」。その結果、収穫した綿花で2011年に商品化することができました。 2009年当時は作付面積は40アール(田んぼ約4枚分)でしたが、「ほぼ0%の綿の国内自給率を、タビオの綿花畑からまずは1%へ」という目標を掲げて作付面積を増やすうちに、今や約5ヘクタール(約東京ドーム1つ分)にまで広がり、綿花畑としては国内最大級の規模になったそうです。 現在、栽培のために契約している休耕田は約33カ所ですが、休耕田を使ってほしいという相談が絶えず寄せられているとのこと。地域の休耕田の増加だけでなく、取り組みが地元の人に浸透していることもうかがえます。 ただ休耕田がすべて同社の綿花栽培など農作物の栽培につながるわけではなく、宅地分譲される場合も多いとのこと。一旦休耕田となり、同社によって綿花が栽培されるようになった土地で再び稲作に戻ったところは1件だけ、ほとんどは宅地分譲となるそうです。田んぼが宅地となっていくことで、風景や自然環境も変化しているのではないでしょうか。