やっぱりエンジン車は気持ちいい! マセラティはなぜいま新型エンジンを開発したのか?【試乗レビュー】
エンジン車ならでは気持ちよさを追求
私が乗ったのは、SUV「グレカーレ・トロフェオ」、23年暮れから日本でのデリバリーが始まった新型「グラントゥーリズモ・トロフェオ」、そしてオープンスポーツカーの「MC20 チェロ」の3台。トロフェオは、ネットゥーノエンジン搭載モデルを意味している。 3つのモデルはまったく異なった車型で、かつ出力はクルマによって微妙に異なる。グレカーレ・トロフェオは390kW(530馬力)、グラントゥーリズモ・トロフェオは405kW(550馬力)。そしてMC20は463kW(630馬力)といった具合だ。 共通して感じたのは、楽しさだ。加速性と、高回転域まで回るエンジンによるパワー感、それに、高性能エンジンを受け止めるシャシーとサスペンション、ステアリングのマッチングのよさが際立つ。 広いエンジン回転域をカバーする容量可変型ターボチャージャーも備えていて、発進から力強く、加速はお見事! といいたくなるぐらいの速さだ。しかも8段オートマチック変速機にはマニュアルモードがあるので、シフトアップのタイミングは運転している自分でもコントロールが可能。エンジン回転を上げていくと、レッドゾーン手前まで加速が衰えないのも、気持ちよさに貢献している。 グレカーレ、グラントゥーリズモ、MC20 チェロと、どのクルマもキャラクターが異なるが、エンジンパワーに振り回されることはなかった。MC20 チェロ(チェロはオープンモデル)は、まさにスポーツカー。いっぽう、グレカーレ・トロフェオは、速いことは速い。でも乗り心地が犠牲になっていないのがマセラティらしさ。 バランスのよさでいうと、グラントゥーリズモ・トロフェオが際立っていた。GT(スポーティでかつ快適さも追求したモデル)づくりに長年の経験をもつマセラティの面目躍如という印象だ。常に安定した動きで、かつ、その気になれば、かなり速い。しかも4人の大人が乗っていられるパッケージも秀逸である。 「マセラティはこれから電動化に向かうのは既定路線ですが、ネットゥーノエンジンを早々に諦めたりはしないつもりです。なにより大事なのは、クライアントが求めるものを提供していくこと。カーボンニュートラルとファントゥドライブを同時に追求していきます」 これはマセラティジャパンの木村隆之代表取締役の言葉。いまの自動車界は、このように事情は複雑、先行きはやや不透明。でもクルマ好きとしては、正直なところ、ネットゥーノを体験したりすると、エンジン車への期待が捨てきれない。